15歳張本「この先も中国に勝つため」ノルマの世界一

<卓球:グランドファイナル>◇最終日◇16日◇韓国・仁川◇男子シングルス決勝ほか

男子シングルスで、世界ランク5位の張本智和(15=エリートアカデミー)が初優勝を果たした。決勝で世界4位の林高遠(23=中国)を4-1で撃破。15歳172日での優勝は、男女シングルスで大会史上最年少となった。今年1月に全日本選手権を史上最年少で制し、年末に世界舞台でも記録を更新。優勝賞金10万ドル(約1100万円)を手にした。

優勝を決めた瞬間、張本は静かに両手を上げた。現実かどうかを確かめるように、周囲を見回した。世界のトップ選手しか集まらない大会で頂点に立ち、さらに史上最年少という快挙は、重いものだった。

取材エリアに入ると、試合以上に息が上がっていた。「こんなに興奮していることは(今まで)ない。それぐらい決勝にプレッシャーがあった」。

試合は優勝直後の静けさとは別物だった。開始直後からお決まりの叫び声「チョレイ!」で、テンションを最大にし、自らを奮い立たせた。得意のバックハンドだけでなく、苦手だったフォアも巧みに使い、リズムをつかんだ。1-1で迎えた第3ゲームは、6連続得点で勢いに乗り、主導権を握った。最終ゲームは2-6からの逆転だった。

日本代表の倉嶋洋介監督も「弱点らしい弱点がなくなってきている」と舌を巻く。以前は弱点のフォアばかりを攻められると強みのバックハンドへの意識が希薄になった。しかし、今では「フォアを突かれるのが当たり前」というメンタルを持ち、さらに下半身の筋力強化で「以前はふわふわしていた下半身が崩れなくなり、フォアが安定した」とすごみを増した。

小さい頃から夢はぶれずに「卓球で世界一」。今回、初めて海外遠征に同行した母凌さんも「トモは卓球のために生きている感じ。私も不思議」と言うほど。エリートアカデミーでの朝練習は必ず一番乗りで、9時30分開始でも、8時45分には到着して練習場を掃除し、誰よりも早く練習を始めた。

20年東京オリンピック(五輪)での金メダル獲得へ、「この先も中国の選手に勝ち続けるためにも絶対に優勝する」と不退転の決意で、この決勝に臨んだ。倉嶋監督は「張本には以前の日本人選手にあった中国アレルギーがないことがすごい」と指摘するなど、時代は変わりつつある。

来年の東京五輪代表選考シーズンに向け「今年の3度の優勝を、来年は1年間通してできるように、またこれから準備したい」と張本。東京五輪まで、歩みを止めるつもりはない。

◆張本智和(はりもと・ともかず)2003年(平15)6月27日、仙台市生まれ。2歳から競技を始め、全日本選手権では小1から世代別6連覇。16年12月世界ジュニアで史上最年少優勝。昨年6月世界選手権で史上最年少ベスト8。同8月のチェコ・オープンでは、男女通じワールドツアー最年少優勝。今年1月には全日本選手権最年少V。6月に荻村杯ジャパンオープン優勝。家族は元選手でコーチの父宇さん、95年世界選手権中国代表の母凌さん、Tリーグ神奈川の妹美和(10)。14年春に国籍を変更し、張姓から張本姓へ。175センチ、62キロ。血液型O。

◆記録メモ 15歳172日での優勝は、男女シングルスで大会最年少。04年大会で16歳だった女子シングルスの郭躍(中国)の最年少優勝を塗り替えた。ダブルスも含めた大会の最年少Vは、14年に女子ダブルスを制した平野美宇(日本生命)伊藤美誠(スターツ)組の14歳。日本選手の男子シングルス制覇は、10、14年の水谷隼以来3度目。

◆卓球グランドファイナル 国際卓球連盟(ITTF)が主催、世界各国で開催されるワールドツアーの年間最終戦。96年に始まった。シングルスはワールドツアーの成績上位15人と開催協会枠1人が出場。ダブルス、混合ダブルスは同7組と開催協会枠が1組出場。上位者に開催協会選手がいる場合、同枠はなくなり成績次点の選手が出場可能。