2位高橋「自分だけのために」フリーで4回転挑戦へ

男子SPで華麗に舞う高橋(撮影・清水貴仁)

<フィギュアスケート:全日本選手権>◇22日◇大阪・東和薬品ラクタブドーム◇男子ショートプログラム(SP)

男子SPで5大会ぶり出場となった10年バンクーバー・オリンピック(五輪)銅メダルの高橋大輔(32=関大KFSC)が、国際スケート連盟非公認ながら今季最高の88・52点を記録し2位発進した。7月に4年ぶりの現役復帰を表明。掲げていた目標のフリー最終組(上位6人)入りを果たした。首位は102・06点の宇野昌磨(21=トヨタ自動車)で、フリーは明日24日に行われる。

両手を広げた決めポーズの中心で、高橋の表情がパッと晴れた。「大きなミスなくできて良かった、という安心感です」。冒頭のトリプルアクセル(3回転半)は着氷で耐え、ジャンプ3つ全てに加点が付いた。

しっとりとした曲調を全身で奏でるような動きに、見る者は静まりかえる。演技構成点は「音楽の解釈」など5項目中3項目で10点満点の9点台。2分49秒の別世界から戻った総立ちの観衆に包まれ「すごく滑りやすい雰囲気。ジャンプを抜きにして、今季で一番良かった」と大舞台を楽しんだ。

1年前、仕事で訪れた全日本選手権。過去の自分と目の前の選手を照らし合わせ、以前の「勝てないんだったら現役をやるべきではない」という考えが「それぞれの思いで戦うのもいい」に変わった。14年ソチ五輪を目指した5季前はボロボロの右膝に向き合い、それでも自他共に結果を求めた。「今回は誰かのためにというのではなく、自分だけのためにやりたい」-。32歳は2度目の競技者としての日々が「すごくあっという間」と目を輝かせる。

幼少時から恥ずかしがり屋で、人見知り。それでもコーチから「あの子のまねをしてみたら」と声をかけられると、先輩の振り付けを完璧にコピーする好奇心があった。心からスケートを楽しむ感情はよみがえり、この日の演技後も「正直、勝たなくてもいい」と笑った。同時に大舞台でわき出たのは「高橋大輔は『レジェンド』と言われていた。『言われるだけのことはあるな』という感想がもらえたらうれしいです」という本能であり、欲だった。

目標のフリー最終組入りを決め、表彰台に立てば19年世界選手権(3月、さいたま)の選考基準を満たす。24日のフリーへ「今のところはやりたい気持ち」と4回転トーループ導入にも本気だ。だが5年前とは気持ちが違う。「今年終わるのか、来年もやるのか、あと何年やるのかも分からない。良くても、悪くても楽しみたい」。高橋は今を、心から楽しむ。【松本航】

◆世界選手権の代表選考 男女ともに3枠。1人目は全日本選手権優勝者。2人目は同選手権2、3位、GPファイナル上位2人、全日本選手権時の世界ランク上位3人のいずれかを満たした選手から総合的に選出。3人目は2人目の選考基準に該当しながらも漏れた選手と、今季の世界ランク上位3人、国際連盟の今季ベストスコア上位3人のいずれかを満たした選手の中から総合的に選出される。全日本選手権出場は必要だが、過去に世界選手権3位以内の実績がある選手がけがなどやむを得ない理由で欠場した場合、選考されることもある。

◆高橋大輔(たかはし・だいすけ)1986年(昭61)3月16日、岡山県生まれ。8歳から競技を始める。02年世界ジュニア選手権を制し、06年トリノ五輪8位。10年バンクーバー五輪で銅メダル、世界選手権優勝。14年ソチ五輪で6位となり、同年10月に引退。引退後はプロスケーター、解説などで活躍。165センチ。