坂本が逆転初V、努力の証し最高レベル4のステップ

女子フリーの演技を終え、ガッツポーズする坂本(撮影・清水貴仁)

<フィギュアスケート:世界選手権代表選考会兼全日本選手権>◇23日◇大阪・東和薬品ラクタブドーム◇女子フリー

女子でショートプログラム(SP)2位の坂本花織(18=シスメックス)がフリー2位の152・36点で逆転し、国際スケート連盟非公認ながら自己ベストの合計228・01点で初優勝を果たした。初の世界選手権(19年3月、さいたま)代表に内定し、合計223・76点で2位の紀平梨花(16=関大KFSC)、同223・34点の3位で5連覇を逃した宮原知子(20=関大)も、同選手権切符獲得を決定的にした。代表発表は今日24日に行われる。

坂本らしい、喜びの叫びだった。「え、え、え~!?」。見たことのない得点を目にし「計算ミスじゃないかな」と目を丸くした。重圧のかかる最終滑走を前に、220点台が3人。その全員を飛び越え、初めての日本一に世界選手権代表切符までついてきた。

これまで下を向きがちだった視線は、ジャッジに合わせた。「『今から跳ぶから、見てろよ』と。見られるところはガッツリ見た。ノックアウトしました」。1年前は2位で平昌五輪(ピョンチャン・オリンピック)出場を決めたが、世界選手権代表からは漏れた。「ここで諦めたら1年間が無駄になる。死ぬ気でやるしかない」。ジャンプは大きなミスなくまとめ、いつも辛口の中野園子コーチを「今日は『本当に強いな』と思いました」とうならせた。

努力は最高のレベル4を獲得したステップに出た。3つのターンを組み合わせる「クラスター」ができず、10月中旬にはフランス人振付師のリショー氏に怒鳴られた。普段は感情豊かな坂本もさすがに「笑っても、泣いても、ダメなので、ひたすら無表情で聞くしかなかった」。今大会直前にも同氏と振り付けを手直しし「いつも顔が死んでいるよ」と優しく諭された。「自覚はあった」と思い直し、結果でも成長を示した。

トップ選手で極めて多い今季8戦をこなし、移動時間を休養に充てる。GPファイナルが行われたカナダ・バンクーバーから帰国した11日は、機内で映画を見ながら涙を流して気分転換。午後8時過ぎに関西に戻ると、その足で兵庫県内のリンクへ行き「時差ぼけが…。今日の夜、寝ないとアカンから」と9時過ぎから練習する徹底ぶりだった。

多忙な秋に受験した神戸学院大からは合格通知が届き、来春からは大学生。平成最後の女王の座は「うれしいけれど、ちょっと違和感がある」と照れながら笑った。4位だったGPファイナル後には「表彰台に上がったら、フワフワした状態で全日本。そうしないための『神様からのお告げ』なのかな」と言った。神様は見捨てずに、その努力を見守っていた。【松本航】

◆坂本花織(さかもと・かおり)2000年(平12)4月9日、神戸市生まれ。4歳で競技を始めて、17年世界ジュニア選手権3位。同年12月に全日本選手権2位で平昌五輪代表に選出されて、初出場の同五輪は6位だった。趣味は水泳と折り紙。身長158センチ。