けが抱えた宇野の信念 ジャンプにすごみ/小塚崇彦

男子フリー ジャンプを決める宇野(撮影・清水貴仁)

<フィギュアスケート:世界選手権代表選考会兼全日本選手権>◇24日◇大阪・東和薬品ラクタブドーム◇男子フリー

宇野選手はすばらしい演技だった。その空気感から強い意志を感じた。ケガをしてもやれる、という単純なものではなく、もっと深いものを感じた。

後半に向け、何か、たがが外れたように動きが変わった。痛みなど、かばっていた心理面が解放され、アドレナリンが出て、試合独特の緊張感の中でスイッチが入ったようだった。強い気持ちは持っていただろうが、不安はあったと思う。6分間練習でもジャンプで痛そうにする場面はあった。「大丈夫かな」と試し試しやっていたが、やるしかないという覚悟に持っていけたのでは。後半の3回転半は3・20点も加点されるすごみのあるジャンプだった。

高橋選手は体のキレはあったので、4回転の失敗は悔しかったと思う。練習ではきれいに跳べていた。滑っていると、とにかく楽しそうで、充実感が体からあふれるようだった。また復帰前とは違った側面を氷上で発揮していた。こういう道もありだな、と思わせる演技だった。大変なのは分かるし、本人の気持ちもあるが、僕としては世界選手権で見たかった。これで終わりではもったいない。(小塚崇彦・10年バンクーバーオリンピック代表、11年世界選手権銀メダリスト)