紀平の太もも「サイド選手」トレーナーが明かす秘密

アイスショーで滑る紀平(撮影・清水貴仁)

フィギュアスケート女子でシニア1年目の紀平梨花(16=関大KFSC)が全日本選手権(24日閉幕)で2位に入り、初の世界選手権(19年3月、さいたま)出場を決めた。25日は大会会場の大阪・東和薬品ラクタブドームで「メダリスト・オン・アイス」に出演。今月上旬のグランプリ(GP)ファイナル(カナダ・バンクーバー)で初出場初優勝した新星は、トリプルアクセル(3回転半)を代名詞とする。橋本大侍トレーナー(35)は、世界屈指のジャンプが跳べる秘密に「身体的特徴」をあげた。

      ◇       ◇

世界選手権の代表発表から一夜。勝負師の表情を崩した紀平が、アイスショーでファンに「支えてくれた皆さんに恩返しするためにも、いい演技ができたら」とあいさつした。シニア転向に始まり、全日本選手権はショートプログラム(SP)5位から急浮上の2位。18年を笑顔で締めた。

GPファイナルでは平昌五輪(ピョンチャン・オリンピック)女王のザギトワ(ロシア)を上回り、日本勢では05年浅田真央以来、男女通じて13年ぶり2度目のGPデビューシーズン優勝。右肩上がりで向上する表現力、スピン、ステップの確かな技術はもちろん、トリプルアクセル(3回転半)など出来栄え点(GOE)で加点を導くジャンプが躍進を支えた。その秘密の1つが「身体的特徴」にある。

3年前から多い時に週3度、大阪市内の整骨院で紀平の体をケアする橋本トレーナーは「サッカー選手に似ている」と下半身の筋肉を表現した。

施術中の紀平から出てくる言葉は、抽象的ながら繊細だという。「なんかおかしい」「もうちょっと」「あっ、楽になった」。特に太もも付近の筋肉は、手でとらえにくい柔らかさを持つ。プロ野球選手やJリーガーも担当してきた橋本トレーナーは、その特徴を「持久力と瞬発力が備わっている」と分析する。サッカーに置き換えると一瞬のスピード、上下運動が必要なサイドの選手に類似する。

今回の全日本選手権では、演技前後やホテルでケアを担当。トレーナーの目線で見た紀平のジャンプは、跳び上がりが新鮮に映る。

「おへその辺りにある体幹の中心を1度、胸まで引き上げる。そこから末端(足裏)に力を伝え、氷の反発をもらう。フィギュアは靴で足首を固定されているので、連動が大事だと思うんです。おへそから胸に1度引き上げることで、力が動く距離が長くなる」

母実香さんによると、別のはり治療の場でも「体をすべて使い、こんなにまんべんなく(はりを)打つのも珍しい」と言われるそうだ。1歳9カ月から通った兵庫・西宮市の幼稚園では、水泳や体操を特訓。紀平は「最近、筋肉の調整の仕方が分かってきた」と笑う。質の高い筋肉に自然と身についた全身運動を掛け合わせ、世界と戦う武器が生まれた。【松本航】