錦織3年ぶりV「ゴールじゃない」全豪初制覇に弾み

3年ぶりにツアー優勝を果たしトロフィーにキスをする錦織(ロイター)

<テニス:ブリスベン国際>◇6日◇クイーンズランド・テニスセンター◇男女シングルス決勝ほか

ついに念願のタイトルだ! 世界9位の錦織圭(29=日清食品)が16年2月のメンフィス・オープン以来、約3年ぶりにツアー優勝を遂げた。同16位のダニル・メドベージェフ(ロシア)に6-4、3-6、6-2で勝利。昨年10月の楽天オープン決勝で敗れた相手に雪辱し、ツアー通算12勝目を挙げた。今季最初の大会を制し、14日開幕の4大大会初戦となる全豪オープン(メルボルン)に弾みをつけた。

ついにこの時がやってきた。待ちに待ったマッチポイント。3年ぶりの勝利のショットがバックのクロスのパスとなり、メドベージェフの脇を抜けた。「やっと優勝できた。右手首のケガから戻ってきてこの場に立てているのがうれしい」。勝利の瞬間、喜びがこみ上げ、両手を突き上げた。

優勝トロフィーが待ち切れない。地元のレジェンドがトロフィーを持つと、おねだりするように両手を何度も差し出した。「7、8回目の(決勝への)挑戦だったかな。本当にうれしい」と笑顔を見せた。最後に優勝したメンフィス・オープンから決勝は9連敗中で、実に10回目の挑戦。悪いことはすぐに忘れる錦織らしさは健在だった。

とんでもない決勝だった。お互いが下がらず、まるでパンチの応酬。死力を尽くして打ち合った。「長いラリーで、リスクも背負いながら、思い切った試合ができた」と振り返る。スーパーショットの連発で、ハイレベルな戦いを制し、完全復活を証明した。

第1セット0-3から逆転で奪った。「自分から相手を崩せなかった。自分から打っていった」と攻めた。第2セットを落とし、最終セットの第1ゲームでダブルフォールトが2本。気持ちが落ちかけたところを踏ん張った。「今日はリターンが本当に良かった」と第4、6ゲームの相手のサービスゲームを破り、そのまま押し切った。

12度目の優勝まで、長い道のりだった。その間、17年8月に右手首の腱(けん)を脱臼。口さがない人たちから「錦織はもう終わった」とまで言われた。18年4月には、世界ランキングが39位にまで落ちた。18年1月に復帰しても、弱った右手首に何度も痛みが走った。そこから不死鳥のようによみがえった。

ただ、3年ぶりの優勝だけに浸っているわけではない。「何よりうれしいのは内容が伴って、どれもすごくレベルの高い試合ができたこと。プラス、優勝できるというのは、すごく自信になる」と手応えをつかんだ。今季無敗で14日開幕の全豪オープン(メルボルン)を迎える。「これ以上ないスタート。ここがゴールじゃない」。4大大会制覇が完全に視野に入った。【吉松忠弘】

◆WOWOW放送 シドニー国際。1月10~12日。男子を生中継。WOWOWライブ。全豪オープン。1月14~27日。連日生中継。WOWOWメンバーズオンデマンドでも配信中。