錦織「不思議」59本エース地獄も連続5セット勝利

男子シングルス2回戦でカロビッチを下し雄たけびを上げる錦織(ロイター)

<テニス:全豪オープン>◇17日◇オーストラリア・メルボルンパーク◇男子シングルス2回戦

世界9位の錦織圭(29=日清食品)が、3時間48分の激闘を切り抜けた。「世界のサービスエース王」で同73位のイボ・カロビッチ(クロアチア)に4大大会自身最多の59本のエースを浴びながら、6-3、7-6、5-7、5-7、7-6のフルセットで振り切った。最終セットは、今大会で初めて採用された10ポイント先取のタイブレークだった。19日予定の3回戦では同44位のJ・ソウザ(ポルトガル)と対戦する。

張り詰めた緊張感で、観客の息づかいが止まった。合計328ポイント目。錦織がサーブをセンターに放つ。カロビッチがバックでリターンした球は、鈍い音を立て、彼自身の目の前に落下した。

「負ける目前まで追い込まれた。勝てたのが不思議なぐらい」

勝利の瞬間、錦織は両膝を折り、両手をコートにつき、かがみ込んだ。そのまま、数秒ほど動けず。その姿が死闘と喜びを物語っていた。「挽回して、気持ちも切らさず、最後までプレーできた。勝ちきった試合だった」。何度も両手を突き上げた。

マッチポイントこそなかったが、それに匹敵する大ピンチが2度あった。最初は、最終セット4オールで錦織のサーブ。0-40と、3本連続でのブレークポイントを握られた。落とせば、次は「エース王」のサーブだ。破り返すのは困難で敗色は濃厚になる。「もう負けたなと思った」。それでも「第1サーブが入れば多少は可能性がある」とサーブにかけた。第1サーブを3本連続で入れ、5点連続で奪った。最大のピンチを逃れた。

最終セットは、今大会から採用された10点先取のタイブレーク。そこでも6-7で相手のサーブが2本というピンチだった。しかし、そこは「チャンスはあると思っていた。読みさえ当たれば、確実にチャンスは来ると思っていた」。2本連続でリターン成功。4点連続奪取で勝利へとつなげた。

自身の4大大会で最多となる59本のサービスエースを奪われた。1ゲーム平均で必ず1本を奪われた計算だが、第2サーブにも手を焼いた。「セカンドでも、俺の(第1)サーブより速かった。200キロも出てた」。相手の最速は219キロ。錦織の第2サーブの平均速度は146キロだったので、時速73キロの差も生まれた。ただテニスはエースの数や速度を競うスポーツではない。どちらが勝ってもおかしくなかった一戦をものにし「すごいうれしかった。自信が増してきた」。

4大大会で5セットを2戦続けて戦ったのは、過去に1度だけ。準優勝した14年全米の4回戦、準々決勝以来でともに勝っている。大舞台での経験豊富な錦織が、勝負どころを見逃さず底力を見せた。【吉松忠弘】

◆4大大会の最終セット 試合時間の短縮と選手の負担軽減のため、今季からは全豪オープンは最終セットで6-6となった場合に10点先取のタイブレーク(TB)を導入した。昨季までは4大大会で全米オープンのみが最終セットで7点先取のTBを採用していたが、ウィンブルドン選手権も最終セットで12-12となった場合に7点先取のTBを実施する。全仏オープンだけが最終セットでTBを取り入れず、2ゲーム差をつけないと終わらない。

◆WOWOW放送予定 18日午前8時50分、午後4時45分から、WOWOWライブ。男女シングルス3回戦ほか生中継。