高梨「探していたものを1つ見つけられた」収穫6位

競技を終え報道陣の取材に応じる高梨(撮影・滝沢徹郎)

<ノルディックスキー・ジャンプ女子ワールドカップ(W杯)蔵王大会>◇個人第9戦◇20日◇山形市クラレ蔵王シャンツェ(ヒルサイズ=HS102メートル)

日本勢は高梨沙羅(22=クラレ)が合計189・8点で6位となったのが最高だった。濃い霧の悪条件の中、1回目は89メートルで8位、2回目は94・5メートルで順位を上げたが、表彰台は届かなかった。マーレン・ルンビ(ノルウェー)が合計198・7点で今季2勝目、通算15勝目を挙げた。

何も見えない真っ白な霧の中に飛び込んだ。8位で迎えた高梨の2回目。この日1番の向かい風を受け94・5メートルをマーク。順位を二つ上げた。1回目と同じくスタートを指示する鷲田徹チーフコーチの姿も確認できない状況。助走路のレールにも雪が積もっていたが「(それよりも)見えない聞こえないの方が恐怖だった」と振り返った。

ジャンプ台からランディングバーンが全く見えない。ここまでの悪条件は初めての経験。1回目の途中からジャンプ台は徐々に霧に包まれた。コーチの指示ではなく、自分でスタートを切ることにも慣れていない。戸惑いもあり、1回目は89メートル。だが「自分でスタートするんだという強い気持ちで向かった」2回目に飛距離を伸ばした。「悔しい試合だったけど良い経験ができた」と前向きに捉えた。

12日の札幌大会(大倉山)から始まった国内個人4戦。3年ぶりの地元勝利はならなかった。それでも収穫はあった。蔵王大会から、スタートゲートでの姿勢を「リスキーな仕方」に変えた。足をつけずに待ち、ある程度の高さからスタートしている。「多少の衝撃はあるけど、それをクリアできればどんな高さのゲートでもスタートを切れる」。手応えを感じて、次はW杯ルシュノブ大会(26、27日・ルーマニア)に臨む。

連日、多くのファンに囲まれ「たくさんの方が見てくれて温かい気持ちになった」。2月には2年に1度の世界選手権(オーストリア)がある。約1カ月の国内滞在を振り返り「自分の探していたものが1つ見つけられた。この先につなげたい」。今季初勝利に向かって少しずつ前進している。【西塚祐司】