全米沸騰オオハシの体操ゆか、東京五輪で見られる?

オオハシの演技の動画画面 UCLA体操チームのツイッターから

1つの動画がこの1週間、全米で話題沸騰となっている。13日に、カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)の体操チームの公式ツイッターが日本時間13日に投稿した、「10点満点じゃ足りない」とコメントが付けられたケイトリン・オオハシ(21=米国)のゆかの演技だ。アナハイムの大会で10点満点の演技を映した2分弱の映像は、再生回数は4000万回を超え、リツイートも17万回以上となっている。一気に脚光を浴びる形になったオオハシ自身も、ツイッター上で驚きと感謝を見せている。

演技はとにかく喜びにあふれている。ゆかは体操の他種目と異なり、音楽に乗せて踊る。年明けからの新演目でオオハシが選んでいるのはメドレー。Tina・Tuner"Proud Mary"から始まり、Earth,Wind&Fire,「September」、TheJackson5′s「IWantYouBack」、MichaelJackson「TheWayYouMakeMeFeel」で構成されている。最後にマイケル・ジャクソンのシャウトに合わせてポーズを決めるまで、とにかく笑顔が印象的で、重力を感じさせない躍動感に満ちた跳躍技も見る者の心を捉える。会場もノリノリで、チームメートがオオハシのチャーミングな振り付けをまねて一緒に踊っている姿もほほえましい。ツイッターではジャネット・ジャクソンも反応し、「驚きだわ」と称賛の声を寄せた。

シアトル出身のオオハシは、日本とドイツにルーツを持つ21歳。ジュニアの全米代表チームで4年間を過ごし、13年W杯米国大会では16年リオデジャネイロ五輪で4冠に輝いたシモーネ・バイルズを破って優勝している。ただし、当人はリオで代表選手として戦うことはなかった。米メディアには、「私は壊れてしまった」と心身的な理由を挙げている。ブログでは「言葉と精神的な虐待があった」と米国代表チームでの苦難を告白している。

一度は閉ざされた成功への道だが、再生を歩んだのは15年に大学に入ってからだった。国際大会とは規則が異なり、いまも10点満点法で採点されるゆかの演技。ここでオオハシが体現し続けたのが「喜び」だった。昨年大会では、演技でマイケル・ジャクソンのムーンウオークも披露し、喝采してくれるファン、仲間の前で演技することで、体操をする喜びを取り戻していった。そして、本人も予期しない形で、その喜びは多くの人に共有されることになった。

最後に、気になるのはオオハシが来年、東京五輪に出場する可能性はあるのかということ。日本体操協会の遠藤幸一常務理事は、「その可能性はかなり低いと思います」と見通す。米国体操界では国際大会を戦う代表選手はそれ自体が1つのチームとして活動しており、大学のチームに所属しながら世界舞台で戦うのは難しいという。オオハシも代表チームから離脱した後に、独自のルールで競技会を行う全米大学体育協会の大会で生きる道を発見した。ルーツを持つ日本でじかにその演技を見ることができなさそうなのは残念だが、「10点満点では足りない」演技は必見だ。