大坂なおみ、バイン氏と契約解消は技術力向上のため

1月、全豪オープンで大坂に準決勝の注意点を授けるバイン・コーチ

女子テニスで18年全米、19年全豪を制し、アジア勢初の世界1位となった大坂なおみ(21=日清食品)が12日、ツイッターでサーシャ・バイン氏(34)とのコーチ関係を解消したことを明らかにした。大坂は「これ以上、サーシャとは一緒に仕事をしない」とつぶやき、それに対しバイン氏も「素晴らしい道のりだった。君の健闘を祈る」と返した。今後のコーチについては数人に打診中。次戦は17日開幕のドバイ選手権(UAE)を予定している。

突然の電撃発表だった。大坂のマネジメント会社IMGによると、バイン氏との契約解消は大坂本人の意思だという。世界1位になり、課題だったメンタルの部分では大きく成長した。将来を見据えたときに、技術的な課題であるネットプレーや第2サーブの改良などでステップアップしたいというのが理由とみられる。

前兆はあった。すでに今年に入って、バイン氏との関係は破綻していたように感じられた。4大大会で2大会連続優勝を果たした今年の全豪では、バイン氏との練習時間が15~20分と短かった。本人は「長くしなくても戦い方は分かっている」と話していたが、あまりにも異例だった。

準決勝をセンターコートで戦った1月24日の同コートでの事前練習は約10分で終了。いつも事前練習後に行うバイン氏のアドバイスも振り切ろうとし、同氏に引き留められたこともあった。練習を予約したコートに2人で現れずに、違う場所で練習していたこともあった。

次のコーチはすでに昨年から数人の候補に打診中。次週のドバイ選手権には、コーチなしで挑む可能性が高い。不安視されるのは、昨年優勝した3月のBNPパリバ・オープン(米インディアンウエルズ)だ。もし早期敗退だと、昨年獲得した世界ランキングの得点1000点の大半を失うことになる。

5月26日に開幕する赤土の全仏(パリ)に向けて、4月からは苦手のクレー(土)コートのシーズンが始まる。そこに新たなコーチがいるのか、またはコーチなしでどのように乗りきるかにも注目が集まる。

バイン氏は18年からコーチに就任。当時、世界68位だった大坂をわずか1年で同1位に導き、WTA(女子テニス協会)から18年最優秀コーチ賞を授与された。バイン氏以外のアブドゥル・シラー・フィジカル担当、クリスティ・スター理学療法士らはスタッフとして残るという。

◆サーシャ・バイン 1984年10月4日、セルビア生まれのドイツ人。本名アレクサンダー・バイン。プロ選手としては自己最高が世界1149位と大成せず。ミュンヘンでコーチをしていた07年に同僚の推薦でセリーナ・ウィリアムズ(米国)の練習相手になり、15年まで務めた。その後、元女王ウォズニアッキ(デンマーク)らの練習相手を務め、17年12月に大坂のコーチに就任。18年から帯同した。

◆テニスのコーチ 契約体系はさまざまだが基本、プロ選手は個人契約でコーチを雇う。個人と個人の合意の元で成立するため、お互いに納得すればコーチが無償で引き受ける場合もないとは言えない。しかし、トップ選手になれば、賞金の10~15%の報酬を渡し、加えて遠征経費は全額選手側の負担。また、優勝した場合のボーナスなどオプションもある。バイン氏クラスだと年間数千万から1億円も稼ぐと言われる。

日本選手の場合、所属という独特の契約方式がある。所属先とコーチが契約し、出張として所属企業がコーチの経費を負担する場合もある。錦織圭のマイケル・チャン・コーチは、ボティーニ・コーチがフルタイムであるため、年間に帯同する週の数を限定する契約を結んでいる。