紀平梨花「悔いない」3回転半2本挑戦も逆転ならず

フリーで華麗な滑りを見せる紀平(撮影・鈴木みどり)

<フィギュアスケート:世界選手権>◇22日◇さいたまスーパーアリーナ◇女子フリー

女子ショートプログラム(SP)7位の紀平梨花(16=関大KFSC)がフリー2位の152・59点と巻き返したが、合計223・49点の4位となった。SP首位ザギトワ(ロシア)との11・18点差を追った演技は、冒頭に成功させたトリプルアクセル(3回転半ジャンプ)を2本目で転倒。今季6戦負けなしだった国際大会の連勝が止まった。ザギトワが237・50点で初優勝した。

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嵐の後を表現する静かなメロディーが、息詰まった観衆の視線を際立たせた。紀平の心は「やるしかない」。冒頭、SPで0点に終わった3回転半に3回転トーループをつけて成功させたが、迎えた2本目の大技に失敗。以降はきっちりとこなし、氷上でつぶやいた「まぁ、良かった」。その理由を「『まぁ』は2本目のトリプルアクセルを失敗したこと。『良かった』は演技全体」と説明した。

SPの出遅れで今季初めて最終組入りを逃した。50分後に滑るザギトワの背中を追い、2本の3回転半にかけた。国際連盟公認大会で女子7人目の成功者になったのは、16年9月。中2で一躍脚光を浴びたが、11月の全日本ジュニア選手権は11位。3回転半失敗が響き、国内の同世代の中でフリー14位に沈んだ。「本当の勝負はシニアから。だからトリプルアクセルを入れよう」。将来を見据えて不安定だった大技を推す浜田美栄コーチの声を信じる一方、世界ジュニア選手権の切符を逃した結果には強く落ち込んだ。

今も舞台裏で苦労が続く。3回転半を踏み切る左の靴が極端に消耗し、大会中も調整に苦心。ホームセンターで片っ端から5000円分のテープを購入。最後に手にしたのは水道の水漏れを防ぐ銀色のものだった。30分に1本の移動シャトルバスを急きょ変更することも多く、浜田コーチは実力を認めるからこそ「試合じゃなく、その前のことを計画的にやる。ちゃんとすれば必ず(結果が)見える」と今後の課題を挙げた。

今季4度の逆転を生んだフリー不敗神話は止まったが、3回転半2本挑戦の決断を「そこに悔いはない」と言い切った。「初めての世界選手権は70%ぐらい頑張ったかな。でも、まだまだ目標はもっともっと高いところ。波のないシーズンで五輪までいきたい」。22年北京五輪へ、ここは通過点に過ぎない。【松本航】