水沼尚輝「高い表彰台を」100バタ制し世界切符

男子100メートルバタフライで優勝した水沼(手前)は表彰式で観客の声援に応える(撮影・滝沢徹郎)

男子100メートルバタフライに期待の新星が現れた。水沼尚輝(22=新潟医療福祉大職員)が派遣標準を切る51秒43で制し、自身初の世界選手権代表を決めた。

バタフライの経験は作新学院高(栃木)3年からと経験は浅いが、身長181センチ、足のサイズ30センチと恵まれた体格が生み出すパワーを武器に躍進。17年世界選手権では4位だった400メートルメドレーリレーでの活躍も期待できる若手が出てきた。世界選手権代表は9日に発表される。

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水沼がパワフルな腕のかきで鋭く伸びた。スタートの反応時間は0・65秒で8人中5番目と遅れたが、50メートルを2番手で折り返す。残り25メートル付近、スパートをかけた。先頭の川本が、どんどん近づく。最後まで躍動感を保ったまま差し切った。左手で水面をたたきつけ感情を爆発。自己ベスト更新で優勝し、初の世界選手権代表入りだ。「世界選手権では決勝に出たい」と自信たっぷりに宣言した。

今春、新潟医療福祉大を卒業した。卒業論文では自身の泳ぎを分析。すると、ひとかきのストロークで約2メートル進むことが判明。世界のトップスイマーに引けを取らない数値だった。足のサイズは五輪史上最多28個のメダル(金23個)を誇るマイケル・フェルプス(米国)の32センチと同等の30センチ。同大の下山好充監督は「あの足が強力なキックを生む」。ワールドクラスの潜在能力を秘めている。

作新学院高入学時に、3年生に萩野公介がいた。「雲の上のような存在でした」と、全国高校総体の決勝にも残れなかった自分と比較。だが卒業後に才能が開花。昨年の日本学生選手権で優勝すると世界で戦う意欲が湧いた。「自分も萩野さんと同じ舞台で戦いたいと思うようになった。今日は後輩として先輩に元気を与えられればと思った」。

17年世界選手権の400メートルメドレーリレーで日本(入江、小関、小堀、塩浦)は、わずか0秒43差で4位だった。今夏、その雪辱を目指す日本チームでの活躍も期待される。「先輩と一緒に少しでも高い表彰台を目指したい」。さらに「来年のオリンピックでメダルを取るというのを心にとめて世界選手権に臨みたい」と高い目標も掲げた。夢の東京五輪へ、遅咲きのニューカマーが名乗りを上げた。【佐々木隆史】

◆水沼尚輝(みずぬま・なおき)1996年(平8)12月13日生まれ、栃木県真岡市出身。作新学院から新潟医療福祉大に進学。

昨年の日本学生選手権(インカレ)では100メートルバタフライで優勝。4月から大学職員と大学院生を兼任。水泳部のアシスタントコーチにも就任。3月16、17日の第1回中村真衣杯(長岡市)100メートルバタフライでは瀬戸大也(24=ANA)に勝って優勝した。181センチ、81キロ。血液型B。