伊調馨3年ぶり海外勢に敗戦「一からやり直したい」

<レスリング:アジア選手権>第4日◇26日◇中国・西安◇女子5階級

20年東京五輪で5連覇を目指す伊調馨(34=ALSOK)が、16年リオデジャネイロ五輪後初の国体大会で完敗を喫した。

初戦の2回戦で巌地恩(韓国)を下した伊調は、準決勝で昨年アジア大会覇者のチョン・ミョンスク(25=北朝鮮)と対戦。開始30秒で両足タックルから失点すると、その後も失点を重ねて第1ピリオドを1-7。第2ピリオドの追い上げも届かず4-7で敗れた。

伊調が海外勢に敗れたのは、リオ五輪前の1月にヤリギン国際大会でプレブドルジ(モンゴル)にテクニカルフォール負けして以来3年3カ月ぶり。3位決定戦に勝って表彰台には立ったものの「必死さが足りなかった。泥臭くてもポイントをとって勝つレスリングをしないと」と話した。

53キロ級の向田真優(21=至学館大)、62キロ級の川井友香子(21=至学館大)はともに決勝で逆転負けして2位。非五輪階級では、72キロ級の鏡優翔(17=東京・帝京高)が優勝。65キロ級の類家直美(18=愛知・至学館高)は2位だった。

まさかの光景だった。開始30秒、伊調が相手の正面からの両足タックルを受けた。軽々とバックをとられ2失点。天才的なディフェンス力が武器の女王が「対応できなかった」と厳しい表情で言った。片足タックルから背後に回られ、ローリングも許した。第1ピリオド(P)で1-7の大差。第2Pも逃げ切られた。

3位決定戦こそフォール勝ちしたが、女王の座に君臨してきた伊調には似合わない表彰台。「いいレスリングをした人が高いところにいた」と話した。昨年12月の全日本選手権の時、田南部コーチが「全盛期より3センチ高い」と指摘した腰高は直らず。この日の初戦では相手の頭が当たって前歯を折った。直後に歯医者に行った伊調は「バッティングしたり」と、原因が腰高にあることを分析した。

もっとも、技術以上に反省したのは精神面だった。がむしゃらに攻めてくる相手に浮足立った準決勝を振り返り「失点して、頭が真っ白になった。必死さが足りなかった」と話した。男性コーチと技術を追求して「きれいなレスリングを目指していた」が、これからは「泥臭くてもいいからポイントを取る。勝つレスリングへ、一からやり直したい」と決意を口にした。

4連覇まで無敵だった。「まあ、強かったんでしょうね」と笑い「今はレスリングできることが幸せで、幸せボケしていた」と振り返った。だからこそ、気がついた「勝つ」ことの大切さ。6月には世界選手権代表を争う全日本選抜が控える。ライバル川井梨紗子が敗戦に何を思うか。「こんなもんか、と思ってもらえればうれしい。こんなもんじゃないので」。弱さを認めた伊調は、さらに強くなる自信を込めて言った。