非常事態のエース村上茉愛、協会は救済案検討を示唆

競技開始前に棄権を決めた村上は涙を拭う(撮影・鈴木みどり)

昨年の世界選手権個人総合銀メダルの村上茉愛(22=日体ク)が涙の棄権を強いられた。3連覇がかかったが、練習中に負った腰のけがの影響で、試合開始直前に出場を断念。

東京五輪の団体総合の枠取りがかかる世界選手権(10月、ドイツ)の代表が絶望的となる中、特例の救済案が浮上する事態となった。寺本明日香(23)が合計166・163点で3年ぶり3度目の優勝を果たして代表入りを決めた。

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女子のエースが泣いた。試合前に。「演技できる自信がない」。村上はそう瀬尾コーチに伝え、直前練習を切り上げた。悔し涙をぬぐい、同じ班で競い合うはずだった寺本と抱擁。「ごめんね、後は任せた」と日本代表では主将の仲間に告げ、去るしかなかった。

1週間前の練習でぎっくり腰になった。診断は「両仙腸関節症」。痛み止めの注射など調整を進めたが、この日の直前練習で再発。判断は任された、苦汁の結論を選ぶしかなかった。「団体出場権もかかっているので出なきゃいけないという一心で…」。3連覇という個人の成績以上に、日本代表の責任感があった。

昨年の世界選手権。3位までが得る東京五輪の団体総合出場枠を6位で逃した。今年の同大会が再挑戦のラストチャンスで、条件は予選9位まで(18年大会の枠獲得国をのぞく)。日本代表は今大会のNHK杯の上位4人。残り1人も12位まで入らないと可能性がなくなる選考方法だった。

日本協会の田中女子強化本部長は「非常に痛い」と非常事態を嘆き、「通常なら1度選考方法を決めているので覆すのはないが、この事態を大変重く受け止めているので、もう1度考える」と明言。エース不在でも9位までに入る実力はあるが、救済案の検討を示唆した。