錦織の逆転勝利生んだ「25秒」と「4年前の経験」

ツォンガ戦に勝利してガッツポーズの錦織(撮影・山崎安昭)

<テニス:全仏オープン>◇29日◇パリ・ローランギャロス◇男子シングルス2回戦

【パリ=吉松忠弘】世界7位の錦織圭(29=日清食品)が警告による分岐点を逃さず、逆転で雪辱を果たした。29日の男子シングルス2回戦で、15年準々決勝で敗れた08年全豪準優勝で同82位のジョーウィルフリード・ツォンガ(フランス)に4-6、6-4、6-4、6-4で逆転勝ち。5年連続で3回戦に進み、5月31日に予定されている次戦では同32位のジェレ(セルビア)と対戦する。

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ツアーは、少しでも試合時間を短縮することに努力している。選手の負担が減ることになり、テレビの放送や観客の集中がしやすくなる。そのため、昨年からポイントとポイントの間の時間25秒を厳守することを、選手に求めた。ショット・クロックというタイマーを各コートに設置。ポイントが終了して再開するまでの間、数字が25秒から減っていく。

この試合で、錦織が逆転する分岐点となったのが、その規則の厳守だった。第1セットの第7ゲーム。3オールでツォンガがサーブの時、15-40となり、錦織はブレークポイントを握った。その時、次の第1サーブに入るまでの時間が25秒を超えたとして「遅延行為」としてツォンガに「警告」が与えられた。

セットを分け合った第3セット。錦織は、第2ゲームの自分のサービスゲームを落とし0-2とリードを許した。このセットを落としたら、もうセットは落とせない。第3ゲーム、ツォンガのサーブでブレークポイントを握った。その次のサーブの前に、再び遅延行為でツォンガは警告を受けた。

2回の警告で、罰則として第1サーブが自動的にフォルト扱いに。第2サーブとなり、それを錦織はリターンエース。そこから2オールに追いつき、第3セットを逆転で奪った。「大きなポイントだった。申し訳なかったが、このチャンスを絶対に生かそうと思った」。

4年前の準々決勝と同じく、センターコートでは、フランス語で「アレ、ジョー!(がんばれ、ツォンガ)」の声援が飛び交った。錦織がサーブを打つ瞬間には、子どもの声が響き、錦織がサーブをやり直す場面もあった。「昔、もっとひどいのを経験している。しょうがない」。最後まで冷静さを貫き、勇気を持って、訪れた最大のチャンスを生かし逆転につなげた。