錦織圭が驚異の逆転劇、全仏独自ルールが相手に重圧

ジェレ戦で勝利しガッツポーズの錦織(撮影・山崎安昭)

<テニス:全仏オープン>◇31日◇パリ・ローランギャロス◇男子シングルス3回戦

【パリ=吉松忠弘】世界7位の錦織圭(29=日清食品)が、最終セット、0-3から驚異的な逆転劇で、5年連続で4回戦進出を決めた。同32位のラスロ・ジェレ(セルビア)を6-4、6-7、6-3、4-6、8-6の4時間26分の死闘で下し、次戦では2年ぶり3度目の8強入りをかけ、同38位のペール(フランス)と対戦する。

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初めて訪れたマッチポイント。興奮のるつぼと化していた1番コートの観客が、息をのんだ。最後、錦織が放ったバックのリターンは、ジェレの足元をえぐる。ラケットに当たったが、錦織の球の勢いが上回り、返球はわずかに錦織サイドのベースラインを割った。思わず両手を広げ、錦織は最高の笑顔を見せた。

最終セット、第1、3ゲームで自分のサービスゲームを落とし、一気に0-3となった。次に相手のサービスゲームをキープされれば0-4だ。2度のサービスダウンは致命的。「ちょっと無理かなと思った」。ただ、逆に開き直るのに、ちゅうちょはなかった。

第4ゲーム、錦織は一転相手を攻め立てた。そのゲームを錦織がブレーク。「いつかチャンスが来ると思って。それだけだった」。錦織の心に灯がともった。そして迎えた3-4での第8ゲーム。2度目のブレークポイントで、ジェレがフォアをアウト。ついに4オール。1番コートを埋めた錦織ファンは狂喜乱舞で、「ケイ」コールがこだました。そして、次のサービスゲームをきちんとキープ。5-4とリードできたことが大きかった。

4大大会の中で、現在、全仏だけ最終セットはタイブレークがない。2ゲームを引き離すまで延々と続く。6オールなど、ゲームが並んでから先にサーブをする選手は、自分のサービスゲームを落としても即負けにはつながらない。しかし、後にサーブを打つ選手は、それが即、負けになる。5-4とリードしたことで、相手に大きなプレッシャーをかけたのだ。

次戦は、因縁のペールだ。14年全米準優勝の1年後、15年全米初戦で対戦し敗れた相手。昨年の2回戦ではフルセットと競った。「明日、しっかりリカバリーしたい」。錦織の目はまだ十分に輝いている。