数字だけ見れば違った錦織のフルセット試合イメージ

ストレート負けした錦織はナダルと握手する(撮影・山崎安昭)

<錦織圭 4大大会上位進出の傾向と対策(中)>

今回の全仏では、世界7位の錦織圭(29=日清食品)の勝ち進み方に焦点が当てられた。3回戦で4時間26分、4回戦で2日がかりの3時間55分。ともにフルセットを戦ったことで、体力が底をつき準々決勝で力尽きた。

錦織には、どうしても5セット試合にもつれ込むことが多いイメージがある。実際にはどうなのか調べてみた。錦織は、今大会を含め、4大大会で25試合の5セット試合を戦った。全試合数は125試合なので、その内の20%が5セット試合だったことになる。

現在のトップ10と比較する。4大大会の総試合数で、20%以上5セットを戦っているのは、錦織以外にズベレフ(ドイツ)、アンダーソン(南アフリカ)の2人だ。アンダーソンは約21・3%、ズベレフになると約31%が5セット試合になる。錦織が決して最も多いというわけではない。

逆に、少ないのはナダル(スペイン)で、4大大会総試合数295の内、29試合の約9・8%しか5セットにもつれこまない。次がデルポトロ(アルゼンチン)の10・5%、フェデラー(スイス)の10・7%となる。この3人に比べれば、錦織は5セットを2倍の確率で戦っていることになる。ただ、イメージほど多いというわけでもないだろう。

また、勝ち上がりの段階で、総ゲーム数が多く、試合時間が長く、それが影響して上位進出を阻んでいるというのも、錦織のイメージだ。それも本当なのか。錦織が4大大会で4回戦以上に進出したのは20回。その内、最後に敗れた試合までにかかった1試合平均ゲーム数と1試合平均時間をはじき出した。

平均ゲーム数、平均時間ともに最多だったのは、ベスト8だった19年全豪だ。4回戦までで1試合平均46・3ゲームを戦い、1試合平均206・8分を要した。ともに2番目が、今大会で、44・3ゲームで、200・5分だった。

4大大会最高成績の準優勝だった14年全米、次のベスト4だった16年、18年の全米の勝ち上がりを見てみよう。その3大会の勝ち上がりで、平均ゲーム数が少なかったり平均時間が短ければ、上位進出の要因がそれだと断言できる。

18年全米は、確かにそうだ。1試合平均試合時間152・9分で9番目に多いが、1試合平均32・2ゲームは3番目に少ない。しかし、14年全米はゲーム数、時間ともに5番目の多さ、16年全米も、ともに8番目の多さだ。

数字だけを見れば、錦織が、必ず5セット試合に足を引っ張られているという事実はない。むしろ、体力勝負に打ち勝って、勝ち上がっていると考えても良さそうだ。また、今年の全豪、全仏が、そのイメージを増殖させていることも確かだろう。