小学5年・開心那3位 スケボ五輪代表争いへ名乗り

<スケートボード:デュー・ツアー>◇最終日◇16日◇米カリフォルニア州ロングビーチ◇パーク女子

北海道から小学生オリンピアン誕生なるか。東京オリンピック(五輪)で初採用されるスケートボードのパーク女子で苫小牧市の小学5年生、開心那(ひらき・ここな=10、hot bowl skate park)が、代表争いに名乗りを上げた。16日(日本時間17日)に米国で行われた五輪予選対象大会デュー・ツアーで日本勢2番目の3位に入った。5月の日本選手権で優勝した天才少女が、夏冬通じて最年少11歳10カ月で迎える東京五輪出場へ好スタートを切った。

      ◇       ◇

小学生五輪出場はもう夢物語ではない。開が東京五輪代表争い初戦で鮮烈な印象を残した。8人が進んだデュー・ツアー決勝2本目。ジーンズにTシャツ姿で、コース上部の縁(コーピング)を使うなど高難度の技を立て続けに成功。本場米国ファンからも歓声が沸き上がった。「3位以内に入れると思わなかったので、うれしい」と喜んだ。

3年前のリオデジャネイロ五輪は7歳だった。メダル7個の競泳日本代表の活躍はかすかに記憶にあるが、どんな大会なのかは知らない。5月の日本選手権で優勝し日本ローラースポーツ連盟(JRSF)強化指定選手に2年連続で選出されても「五輪は世界からいろいろな選手が出て戦う大会。出られるんだったら出たい」。周囲の期待は感じているが、五輪を特別なものとは受け止めていない。

無理もない。一気に頭角を現したのは、9歳で出場した昨年5月の日本選手権で4位に入ってから。8月には海外デビュー戦のVANSアジアで優勝、11月の世界選手権でも7位に食い込んだ。母美奈子さん(42)が「自分たちも信じられない」というぐらいの急成長だった。エア(空中技)の高さに課題は残るが、難易度の高い技を繰り出し今年5月の日本選手権を制した。五輪出場が現実味を帯びてきた。

競技に出会ったのは幼稚園児だった5歳。スケートボードを見るのが好きだった母が「家族で一緒にできるスポーツをさせたかった」のがきっかけ。苫小牧市内の練習場に通い始めると「新しい技ができるようになったとき、誰かと一緒に滑ると楽しい」(開)と夢中になった。現在は放課後に1日3~5時間、同市や札幌市で練習を積む。指導者はいない。先輩ボーダーを手本に新技を覚え技術を磨いている。

今年の日本選手権パーク女子決勝進出8人は全て10代で平均12・75歳。まだ歯も生えかわっていない10歳の開が、腰まである髪をなびかせ華麗に技を決める姿はメディアでも大きく取りあげられた。「友だちに『テレビで見たよ。かっこいいね』っていわれるのはうれしかった」。競技にはつきものの、すり傷や打撲を負いながらも打ち込んだ。

東京五輪のパーク女子の出場枠は開催国枠1を含む最大3枠。五輪ランキングに反映する得点が付与される大会は来年5月まで続く。その初戦で得点を稼ぎ、幸先のよいスタートを切った。「世界で活躍できるかっこいいスケートボーダーになりたい」。無邪気に話す天才少女の五輪への挑戦が本格化してきた。【浅水友輝】

◆東京五輪スケートボード種目 ストリートとパークの2種目。ストリートは斜面や階段、手すりを模したコースを使用。パークはコンビプールと呼ばれるお椀を組み合わせたようなコースで争う。両種目ともトリック(技)の難度、スピード、構成、独創性などを競う採点競技。ジャンプやスライド技の多いストリートに対し、パークは回転技が多い。

◆パークの五輪代表争い 東京五輪にはストリートと同様に男女各20人の選手が出場する。日本は開催国枠1を含め最大3人が出場。9月10日開幕の世界選手権(ブラジル)で3位以内に入れば無条件で五輪出場権が与えられる。その他は五輪ランキングの上位17人が選出される。ランキングは国際オリンピック委員会認定の団体「ワールドスケート」が定める19年1月1日から20年5月31日までの各大会の結果で決まる。日本代表は開のほか、18年世界選手権女王の四十住さくら(17)同2位の中村貴咲(19)今回のデュー・ツアー優勝の岡本碧優(12)日本選手権3位の小川希花(18)らが争う。

◆五輪の年齢制限 夏季、冬季とも出場に年齢制限はないが、各競技団体が肉体的な負担などを考慮して五輪出場に年齢制限を設ける例もある。冬季でフィギュアスケートの浅田真央は規定(開催前年6月末で15歳以上)に87日足りず、トリノ五輪に出場できなかった。過去にはボクシングが17~34歳、体操は男子16歳、女子15歳以上、新体操は16歳以上の規定を設けられている。サッカー男子はW杯との差別化を図るため23歳以下。夏冬通じて日本勢の史上最年少出場は36年冬季ガルミッシュ・パルテンキルヘン五輪フィギュアスケートに稲田悦子が12歳で出場している。

◆開心那(ひらき・ここな)2008年(平20)8月26日、苫小牧市生まれ。5歳で競技を始めた。日本選手権は18年4位、19年優勝。趣味は絵を描くこと。得意科目は図工で上海の大会に出場した経験から、授業では針金で上海タワーを作った。好物はカレーうどんとカレーラーメン。名前の由来は南国好きの母が「ココナッツ」から付けた。146センチ、34キロ。家族は両親と弟。血液型はO。