松元克央が日本新で銀「信じられない」男子200自

男子200メートル自由形決勝で2位となった松元は銀メダルを手に笑顔(撮影・鈴木みどり)

<水泳:世界選手権>◇第12日◇23日◇韓国・光州◇男子200メートル自由形決勝

【光州=益田一弘】初ガツオだ! 松元克央(22=セントラルスポーツ)が、日本新の1分45秒22で銀メダルを獲得した。男子200メートル自由形では五輪、世界選手権を通じて日本人初の表彰台。3着でゴールも1着選手が失格して繰り上がった。14年萩野公介の日本記録1分45秒23を5年ぶりに0秒01更新し日本競泳陣メダル1号。88年ソウル五輪背泳ぎ金メダルの鈴木大地を育てた名伯楽の鈴木陽二コーチ(69)とコンビを組んで2年。世界の厚い壁に阻まれてきた花形種目で、くさびを打ち込んだ。

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松元の頭に、鈴木コーチの言葉が響いた。5位でターンしたラスト50メートル。「明日、動かせないぐらい、体を動かせ!」。持ち味のラストスパートを発動。タッチすると頭上のスタート台に3位を示すランプが3つ。「すごくうれしい」。直後に1着選手が失格して銀メダル。「信じられない気持ちでいっぱい」。

準決勝の自己ベストを0秒34も更新。「何も失敗がない完璧なレースだった」。萩野の日本記録も超えた。186センチの長身で海外勢に負けない筋肉質の体を生かし、花形種目で堂々の結果。本名は克央(かつひろ)だが、小学校時代からあだ名はカツオ。両親も仲間もそう呼ぶ。「『魚のように速く泳ぐ』という意味もある。もうかつひろと言われても振り向けない」。

17年世界選手権で日本代表入りも予選27位で敗退。ただ出るだけだった。決勝をスタンドで見て「この場にいたい」と強く願った。本格的に鈴木コーチの指導を仰ぐようになった。名伯楽のハード練習に食らいついた。鈴木コーチは「自分で考えて追い込めるし、逃げない。長官(鈴木大地)は無理してやらせても、やらなかったが…」。昨秋からの右肩痛で3カ月のリハビリ。松元は「泳ぎたくないくらい、痛い時もあった。信じてついてきて、よかった」と感謝した。

同種目で男女通じて日本勢初のメダルとなった。「200メートル自由形で日本人が戦うイメージがないので、それを覆したい」。萩野不在の800メートルリレーでも中心になる。個人での男子自由形五輪金メダルは、36年ベルリン大会1500メートルの寺田登以来なし。競泳ニッポンのカツオは「頂点ガツオを目指します」と宣言。「鈴木先生は銀メダルでも喜んでくれると思うけど、金じゃないと心の底から喜ばせることはできない」。来年の東京で大勝負に打って出て84年の時を超える。

◆松元克央(まつもと・かつひろ)1997年(平9)2月28日、福島県いわき市生まれ。千葉商大付高-明大。18年アジア大会の競泳男子400メートルリレーと800メートルリレーで金メダル、200メートル自由形で銀。世界選手権は17年大会に続いて2回目の出場。セントラルスポーツ。186センチ、85キロ。

○…鈴木コーチは、銀メダルの松元に「まあまあだね」と声をかけた。「今の実力からしたら9割方は出したかな」。東京五輪の目標タイムは1分44秒5台を設定した。現在は100メートル~150メートルで力をためるレースパターン。名伯楽は「あと1年でそこのトレーニングをしたい。そこで0・5秒上げると勝負になる。1番速い種目でメダルをとる、金を目指すのは面白いですよ」とにっこり笑った。