瀬戸2冠「逃げ」指摘され甘え排除 過酷トレで頂点

男子400メートル個人メドレーで優勝し、声援に応える瀬戸(撮影・鈴木みどり)

<競泳:世界選手権>◇最終日◇28日◇韓国・光州◇男子400メートル個人メドレー決勝

【光州=益田一弘】あの北島を超えた! 瀬戸大也(25=ANA)が、日本人最多の通算4個目の金メダルを獲得した。前半から飛ばし最後の50メートルで失速も逃げ切った。200メートルとの2冠でともに五輪内定。日本人の2冠は03年の男子平泳ぎの北島康介以来16年ぶり、通算数も北島を上回った。今大会は金2、銀1と日本初の1大会個人種目メダル3個も獲得。萩野公介、チェース・ケイリシュ(米国)が不調の中で同種目最多の3度目の優勝。東京五輪までにさらにタイムを上げていく。

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瀬戸は、ラスト50メートルで猛追を受けた。迫るリザーランド(米国)に「もうやめてくれー」。最後の自由形は1分0秒06の大失速。「死ぬかと思った。タイムは満足できないが、本当にラッキーだった」。自己ベストに1秒遅れの優勝タイムに苦笑いした。

予選は全体トップ。ケイリシュの予選落ちを見て「決勝、1人旅します」。2つのプランが浮かんだ。確実に金をとるか、五輪を見据えて積極的に突っ込むか。選んだのは後者。「(安全策が)頭をよぎったのはまだまだ甘さだが、びびらずにやれた」。

前回大会は銅2で自身初の複数メダル。400メートル個人メドレーは金のケイリシュにリードされてレース中に3位狙いにした。「1つでいいから金がほしかった」と悔しがったが、本当はほっとした。

昨春の日本選手権。200メートルのバタフライと個人メドレーの決勝が同じ日に重なった。ともに2位。400メートル個人メドレーは派遣標準記録ぎりぎりの4分14秒01で2位。何とか3種目で代表入りして「最低限でした」と悔しがったが、本当はほっとした。そして自分に問いかけた。

「どれも優勝できなかった。世界選手権でメダルをとって満足している自分がいる。2年前のリオの悔しさを忘れかけていないか」

16年リオ五輪。金の萩野、銀のケイリシュに続く銅メダル。60年ぶりの日本人ダブル表彰台に立った。東京五輪へ「公介とワンツーで」と晴れやかに言った。しかし後日、関係者から「公介とワンツーって逃げてるんじゃないか」と指摘された。心から頂点を目指しているのか。「正直口だけだったんじゃないか。アスリートとして東京五輪を終えて、まだできたというのを残したくない」。

昨夏から後半の失速覚悟で前半から飛ばすレースを繰り返す。筋肉に乳酸をためて泳ぐ過酷なメニューで1本目から全力でいく。自己記録4分7秒95は萩野と1秒90差、ケイリシュと2秒05差。限界を超えなければ、勝負できない。「どんなにきつい練習でも、覚悟は決まっている」。

03年北島以来の2冠=2種目内定。日本人初の1大会個人種目メダル3、日本人最多の通算金4、フェルプスらを超える同種目3度目優勝と記録ずくめ。自慢の勝負勘に持ちタイムがついてくれば、ライバル2人と真っ向勝負できる。光州の夏を駆け抜けて「これ以上に水泳がやめたくなるぐらい練習したら、いい結果がくる。しんどい時は家族のパワーをもらって。公介もケイリシュも結婚してないから、強いんじゃないですかね」とからりと笑った。

◆瀬戸大也(せと・だいや)1994年(平6)5月24日、埼玉県生まれ。埼玉栄高、早大卒。13年世界選手権男子400メートル個人メドレーで金メダルを獲得し、15年大会で2連覇。16年リオデジャネイロ五輪は同種目で銅メダル。174センチ、75キロ。