丸山初V五輪へ前進 右膝負傷も準決勝で一二三撃破

男子66キロ級の表彰式で並んで記念写真に納まる優勝した丸山(左)と3位の阿部(撮影・大野祥一)

<柔道:世界選手権>◇決勝◇26日◇東京・日本武道館◇男子66キロ級

男子66キロ級で、初出場の丸山城志郎(26=ミキハウス)が金メダルを獲得した。準決勝では3連覇を狙った阿部一二三(22=日体大)を延長の末、下した。女子52キロ級では世界女王の阿部詩(19=日体大)が2連覇を達成。阿部一と17年世界女王の志々目愛(25=了徳寺大職)は敗者復活戦を勝ち上がり、ともに銅メダルを獲得した。

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事実上の“決勝”となった宿敵阿部一との準決勝。丸山は序盤に投げ技を受けた際、右膝内側靱帯(じんたい)を損傷した。左手もつって足を引きずりながら技が出ず、立て続けに指導2を受けた。誰もが負けを予想した中、壮絶な執念を見せた。防戦一方で迎えた延長3分46秒。得意のともえ投げから浮き腰で技ありを奪ってライバルに3連勝。決勝では金琳煥(韓国)を下し、初の世界一の称号を手にした。

丸山は「勝ちたいという気持ちだけだった。自分は負けたら終わりの立場。ここで終わりでもなく、最終目標は東京五輪の金メダル。『丸山強い』と世界で言われるような柔道を目指したい」と、満身創痍(そうい)で戦った死闘をこう振り返った。

急成長の転機は、昨年8月のアジア大会だった。決勝の敗戦を機に、相手に合わせる柔道から自身の柔道を貫くことを決めた。92年バルセロナ五輪65キロ級7位の父顕志さん(54)から伝授された鋭い内股を軸とした「美しい柔道」を追求。小学生の頃、河川敷や自宅マンションの非常階段を28階までダッシュして鍛えた下半身で、相手の中に入り込んで左足を大きく上げる得意技を磨いた。その切れ味の良さから母校天理大の穴井監督は「日本刀のような鋭さ」と表現した。さらに、技の威力が落ちない肉体を目指し、瞬発力を中心とした筋トレで柔道力を強化。昨年11月のグランドスラム(GS)大阪大会決勝で阿部に勝利して以降、国内外の大会で4連勝して、世界代表1番手に選出された。

20年東京五輪には、特別な思いがある。憧れの父の映像を幼少期から見てきて「五輪を夢で終わらせない」という強い気持ちを持ち続けた。6年前に左膝前十字靱帯(じんたい)を損傷し、一度は諦めかけた夢舞台。「世界一になってオヤジを超える」。26歳の苦労人は、夢実現へ大きく前進した。【峯岸佑樹】