東京五輪確実の五十嵐カノア1回戦は逆転で1位突破

ラウンド1で華麗な演技を披露する五十嵐カノア(撮影・井上学)

<サーフィン:ワールドゲームズ>◇第4日◇10日◇宮崎・木崎浜海岸◇男子個人戦

日本のエース、五十嵐カノア(21=木下グループ)が宮崎のファンを魅了した。

初優勝を狙って1回戦に登場した五十嵐は、計算し尽くした鮮やかな逆転劇で1位突破。「聖地」のファンの声援を力に、圧倒的な力をみせた。今季世界最高峰のチャンピオンシップツアー(CT)ランク7位につけ、東京オリンピック(五輪)代表の座は確実。五輪予選を意識せず、仮想五輪として金メダルを目指す。

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残り2分、浜からの大歓声に乗って、五十嵐はテイクオフした。トップとの差は0・24。逆転には6・25が必要だった。「波に乗った瞬間、逆転できるなと思った」。インサイド(岸寄り)まで乗り切って勝利を確信。7・77の高得点に観客がフィーバーすると、大歓声を浴びながら沖に出ず終了のホーンを待った。

波が小さく、普段戦っているCTとはルールも異なる。それでも、順応力は抜群。「ヒート時間が20分と短いから、いい点を2本そろえることを考えた。ISA(国際サーフィン連盟)ルールに合わせた」。昨年はCTとの採点基準の違いにも苦しんだが、今年は克服。「CTのジャッジが入り、点の出方が近くなってきた」と余裕で言った。

ただ波に乗るだけではない。勝つために戦略や戦術を考えるのが好き。父勉さんは「チェスが好きだし、勝つための道筋を考えるのは得意かも」と話す。大会でも日本チームの「リーダー」としてヒート直前の選手にアドバイス。「的確だし、勝つためのコツを分かっている」と、宗像チームマネジャーは信頼する。

今大会は東京五輪予選を兼ねるが、五十嵐はCT枠(上位10人)での選出が確実。現在7位の五十嵐は3万780ポイント、すでに10位だった昨年の3万520ポイントを上回る。だからこそ「今回は五輪予選は考えず、ISAの大会に勝つことを考える」と、ISAが主管する来年の東京五輪を見据えて話した。

「まだ100%は出していない。60%ぐらい」。昨年は唯一のCT選手として準優勝を果たしたが、11度世界王者のケニー・スレーター(米国)や昨年CT年間優勝のガブリエル・メディナ(ブラジル)ら、世界のトップがズラリとそろう今大会で勝つことは簡単ではない。だからこそ「目標は優勝。最後に100%になるようにしたい」と、東京五輪金メダルに弾みをつける初優勝を目指して話した。【荻島弘一】