永山竜樹、来年閉校の母校に「五輪金」刻み込む

母校美唄峰延小での講演会後に児童と記念撮影する永山(前列左から5人目)(撮影・浅水友輝)

歴史の幕を下ろす母校に、金メダルを届ける! 柔道男子60キロ級で東京オリンピック(五輪)代表候補の永山竜樹(23=了徳寺大職)が10日、母校の美唄峰延小で講演会を行った。1900年(明33)創立の母校は来年3月に閉校。2年連続銅メダルとなった8月の世界選手権ではリオデジャネイロ五輪銅メダルのライバル高藤直寿(26=パーク24)を破ったが、代表争いは一進一退。全校児童19人の前で、1年を切った大舞台への出場と活躍を誓った。

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つぶらな瞳でじっと見つめてくる19人の児童の視線に永山は少し照れた。そして力強く宣言した。「自分の夢は小さいころから変わらない。オリンピックで金メダルを取りたいと思って柔道をやってきた」。社会人1年目で初めて臨んだ講演会の演題は「夢は叶う! 自分の夢に向かって」。嘘偽りなく子どもたちの前で宣言した。

生まれ育った美唄市郊外の峰延が自身の原点だ。野球少年団に入り、遊び場だった山ではクワガタやオタマジャクシ取りに熱中した。そして柔道に出会った。卒業アルバムにはこう書いた。「オリンピックで五連覇する」。当時を振り返り「野村(忠宏)さんが3連覇で、4じゃきりが悪いので5にしました」。壮大な夢を描いた場所だ。

小学校卒業後に故郷、そして北海道を離れて10年がたった。今、夢は現実に近づいてきた。8月の世界選手権で2年連続銅メダルを手にした。東京五輪代表候補にまで上り詰めたが「近づくにつれて難しさを感じる」。そう口にするのは五輪出場には乗り越えないといけない壁があるからだ。

東京五輪への道には、東海大の3学年先輩、高藤が立ちはだかる。直接対決では3勝2敗と永山が勝ち越しているが、高藤にはリオ五輪の銅メダルに加え17、18年連覇を含む世界選手権3度優勝の実績がある。8月の世界選手権後に男子日本代表の井上康生監督(41)が「(代表選考では)五分五分だ」と言い、代表争いはまだまだ一進一退の攻防が続く。

卒業以来の母校訪問。来年3月に閉校する学びやでの講演には、120人超の住民も駆けつけた。何度も「ガンバレよ」と握手を求められた。地元の応援に決意を新たにして迎える次戦は、11月のグランドスラム大阪大会。「グランドスラム、(来年の)欧州遠征、最後の(全日本)選抜。この3つを優勝すれば(五輪)代表になれる。目の前の試合を1つ1つ大事にしたい」。学校史に「金メダリスト」を生んだ歴史を刻んで見せる。【浅水友輝】

◆永山竜樹(ながやま・りゅうじゅ)1996年(平8)4月15日、美唄市生まれ。4歳で競技を始め、美唄峰延小6年までは野球も続け3番投手。愛知・大成中-大成高を経て東海大に進学。1年時に世界ジュニア優勝、2年時には講道館杯全日本体重別を制し、3年時には全日本選抜体重別選手権優勝。4年時にはグランドスラム大阪、同デュッセルドルフ大会優勝。18、19年世界選手権は3位。好きな食べ物は焼き肉。156センチ。家族は両親と弟、妹。血液型A。

◆柔道男子60キロ級の東京五輪代表への道 日本連盟は8月の世界選手権各級優勝者に対しては、11月のグランドスラム(GS)大阪大会の結果によって選出すると指針を示している。しかし永山、高藤ともに優勝を逃している60キロ級は、11月のGS大阪大会、来年2月の同パリ大会、同デュッセルドルフ大会、4月の全日本選抜体重別選手権などの成績で選考される。