川井梨紗子V、勇気体現し敗者復活の妹へ最高エール

<レスリング:東京五輪予選兼世界選手権>◇第6日◇19日◇カザフスタン・ヌルスルタン◇女子57キロ級

【ヌルスルタン=阿部健吾】リオデジャネイロ五輪金メダリストの川井梨紗子(24=ジャパンビバレッジ)が女子57キロ級を制した。前日に東京五輪内定を決め、迎えた決勝。試合前には62キロ級の妹友香子(22)の敗戦を知り心は揺れたが、主将の使命感も胸に、勝ちきった。今日20日の敗者復活戦では妹を全力サポート。3位に入れば姉妹での五輪出場がかなう。

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川井梨は決勝の試合を妹にささげた。「勇気づけたかった」。昨年覇者栄寧寧(中国)に序盤から果敢な攻め。勇気を体現して9-0と会場を沸かせた。終盤に反撃にあって9ー6の勝利も、試合を通じてマットの上からこれ以上ないエールを送った。

心は乱れた。朝に計量を終え戻ったホテルで、母初江さんから妹が3回戦で敗れたことを知った。部屋に1人。「話せない。どうしたらいいか」。心が折れそうになった。動揺を抱えたが、母から「梨紗子は梨紗子の戦いをしっかりやりなさい」と言われ、必死に切り替えた。決勝前、妹に勝った相手が決勝に進み、敗者復活戦にいけることが決まった。練習場で無言で抱き合い、決勝でやるべきことは決まった。

もう1つの使命感もあった。「チームのために勝ちたかった」。常勝軍団の日本女子が今大会は苦戦。金メダルの可能性も絞られていた。大会前には主将に指名された。「自分も引っ張る立場にならないといけない」。自覚を持ち、悪い流れを断ち切った。

今日はやることは1つ。「友香子をしっかりサポートしたい」。日本の現役最強女王には、まだ仕事が残っている。