東京五輪切符のJR車掌、外薗潤平が制服姿で金宣言

東京五輪のセーリング470級日本代表に内定し、記者会見で車掌ポーズで笑うJR九州の外薗潤平(撮影・菊川光一)

JR車掌がオリンピック(五輪)切符をつかんだ。

20年東京五輪のセーリング男子の470級で、代表に内定したJR九州の外薗(ほかぞの)潤平(28)が25日、JR九州本社で記者会見に臨んだ。「九州代表として、九州男児らしく熱いハートでやりたい」と抱負を語り、メダルの色には「1番。金メダルがいいです」と威勢よく優勝を宣言した。

だが、実は、外薗自身も想定外の五輪切符だった。外薗は、日本経済大を卒業後、13年にJR九州に入社。約3年、福岡の新飯塚駅駅員を皮切りに、長崎本線や佐世保線などを走る電車の車掌を務めた。この日の会見にも、車掌の制服姿で出席した。

スポーツの特待があったわけではない。一般と同じ、若手社員として勤務を始めた。とはいえ、鹿児島商高に入学した当初から、のめり込んでいたヨットへの情熱は忘れられず、仕事の傍ら、体力を維持するため筋肉トレーニングは続けていた。月1回ほど、海に行くこともあったという。

そんな外薗の環境は、15年末、ナショナルチームの選考レースに合格したことで環境が一変。長崎支社の総務企画課に配属となり、会社業務は行わず、競技に専念できるようになった。練習環境は激変した。

現在、ペアを組む岡田奎樹(23)が所属するトヨタ自動車東日本セーリングチームの一員として、五輪のセーリング会場である神奈川・江の島ヨットハーバーを拠点に練習に励む日々。今後は、レベル向上のため11月下旬から海外合宿を行う予定もある。「風が吹くと苦手。そこが課題」と自覚もし、勝負を大きく左右する強風対策に取り組む覚悟だ。

外薗はもともと、小学3年から6年まで、相撲に汗を流していた。引き落としなど、小技を得意とする相撲少年だった。中学では「好きな女の子がいたから」という理由で、陸上長距離に打ち込んだ。高校でヨット部を選んだのも「好きな釣りができるという軽い気持ちから入った」と振り返る。

ただ、風の向くまま、まるで流され、導かれるかのように、スポーツに親しんできた外薗にとって、ヨットだけは違った。エンジンなしで、風の力だけで、波しぶきを受けながら海を走る奥深さのとりこになっていった。

昨年、五輪前哨戦とされたW杯江の島大会の470級で、岡田と組み優勝している外薗。五輪本番でも、練習拠点とする“地の利”を生かして頂点を狙う。