羽生結弦が苦手払拭V、鬼門の大会名口にし自ら重圧

スケートカナダ・男子フリーの演技を終え、リンクを触る羽生(撮影・菅敏)

<フィギュアスケート:GP第2戦スケートカナダ>◇26日(日本時間27日)◇カナダ・ケロウナ ◇男子フリーSP

【ケロウナ(カナダ)=佐々木隆史】羽生結弦(24=ANA)が前日のショートプログラム(SP)に続きフリーも1位で自己ベスト、合計322・59点で初優勝し、ファイナル含むGP通算11勝目を挙げた。

フリーでも自己ベストの212・99点を記録。自身4度目のスケートカナダを、ついに制した。合計点でネーサン・チェン(米国)の歴代最高323・42点に肉薄する滑りだったが、完成度は3割程度と厳しい自己評価。前人未到のクワッドアクセル(4回転半ジャンプ)投入にあらためて意欲を示すなど、五輪2連覇のスケーターは底知れない。

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片膝を着いたフィニッシュポーズで、羽生は力強く右拳を握りしめた。息を切らしながらも浮かべた笑顔。そのまま両膝を着くと右手で氷をさすり、優しくたたいた。そして立ち上がると、感情を爆発させるように「勝ったー!」と雄たけびを上げた。いつも通り、大量のプーさんのぬいぐるみが投げ込まれたリンクで初優勝。2位のニュエン(カナダ)に合計で59・82点もの大差をつけた。

冒頭の4回転ループは着氷で乱れたが、崩れなかった。世界初の大技、4回転トーループ-つなぎの1回転(オイラー)-3回転フリップを決めるなど、3本の4回転ジャンプを着氷。ステップも全て最高レベルだった。「久しぶりに心の中から自分に勝てたと思える演技。ショートとフリーともにそろうことが長い間なかったので、そのこと自体がうれしい」。

自らかけた重圧にも打ち勝った。スケートカナダは、これまで3度出場して全て2位。大会前にはコーチに対して「自分で『スケートカナダだよ』って言って『それは言ったらダメだよ』って冗談言われるぐらいプレッシャーをかけた」とあえて大会名を口にして意識したという。「プレッシャーに最終的に勝って、2つともいい演技を出すことができた」とうなずいた。

自己ベストを更新しても歩みは止めない。これだけの演技をしても「このプログラムに関しては30%とか20%。4回転アクセルを入れたいと思うし、もしかしたら(4回転)ルッツを入れたいって思うかもしれない」。スケートを追求する気持ちは、まだまだ尽きない。

SP、フリーは2季連続の再演。だからこそ、今季は完成度の高さを追い求める。優勝した9月のオータム・クラシックから、わずか1カ月で結果を出し「オータムよりはステップアップできた」。GP初戦を制し、新たな挑戦への旅が始まった。