NBAカリー独占インタビュー、成功への3ポイント

テレビ中継を通してインタビューに応じたNBAウォリアーズのカリー。左から2人目は奥岡記者

年収約93億円のスーパースターが、20年東京オリンピック(五輪)にやってくる。NBAで最優秀選手を2度獲得しているウォリアーズのステフィン・カリー(31)が、テレビ電話で日刊スポーツの単独インタビューに応じ、リハビリを克服しての五輪出場へ意欲を示した。ウィザーズのルーキー八村塁についても高く評価した。【取材・構成=奥岡幹浩】

海の向こうからテレビ電話越しにまず手を振ってあいさつしたあと、スーパースターは東京五輪出場へ向けて揺らぐことのない思いを語り始めた。

カリー 五輪に出るチャンスがあることにとても興奮している。五輪出場は目標。今は手の状態を回復させ、来夏にプレーできるようにしたい。

かねて五輪への意欲を示してきたが、10月30日、開幕4戦目のサンズ戦で左手を骨折した。長期離脱を強いられ、苦しいリハビリを続ける中で、前向きになる原動力となっているのが東京五輪の存在だ。米国代表として2度のW杯(世界選手権)優勝に貢献した一方で、五輪の舞台にはまだ立っていない。16年リオ大会では暫定メンバーとして名を連ねていたものの、当時痛めていた膝と足首の治療を優先させるため、代表辞退という苦渋の選択を強いられた。

カリー W杯には2度出ているが、五輪はまだ出場した経験がない。国を代表してプレーできることにやりがいを感じる。そして東京は自分が一番好きな街の1つ。その場所でプレーできることを楽しみにしている。

今年9月に中国で行われたW杯で、カリー不在の米国代表は3連覇を逃したどころか7位に終わった。五輪4大会連続金メダルが懸かる東京大会では“本気モード”の布陣で臨むとみられる。歴代屈指のシューターと称されるカリーは、スター軍団の中心選手として期待される。

カリーは今年6月に来日した際、ウィザーズからドラフト指名を受けた八村塁について、「バスケIQが高い。彼のプレースタイルは、NBAの試合が向かっている方向性にすごく合っている」と評した。その八村のデビュー後の活躍についても、高く評価している。

カリー ポテンシャルは非常に高いし、既にそれを証明していると思う。ルーキーとしてしっかりプレーし、どんどん学んでいくことが重要になるが、そのことを今はきちんと実行できている。彼の地元ワシントンでも、評価は高いと聞いている。

負傷した左手は、全治3カ月以上と診断された。ウォリアーズは2月と3月にウィザーズ戦が1試合ずつ組まれているが、それまでのコート復帰は難しそうだ。

カリー 残念ながら今季は八村選手との対戦機会はないかもしれないが、彼はここまでとても良い形でチームにフィットしている。今後、素晴らしい選手になっていくだろう。

NBA RAKUTENで無料配信中の動画「ザ・ライジング~HOOP ORIGINS」に出演。日本でバスケットボールに関わる人々と積極的に交流した。

カリー 素晴らしい出来栄えで、(制作した)楽天に感謝している。バスケットボールが日本で成長していることや、バスケットボールを通じて自己表現できる喜びを伝えたかった。日本人選手たちの、より高いレベルに行きたいという気持ちは、過小評価を覆そうとしてきた私の精神と通じる部分があると思う。

身長190センチのカリーは、NBAプレーヤーとしては小柄な部類だ。多くの日本人プレーヤーも、五輪やW杯などの国際大会では、自分より大きな体形の相手と戦うことになる。そういう中で好結果を残す秘訣(ひけつ)はあるのか。

カリー アンダーサイズな選手が大柄な選手と渡り合うには、シュート、ボールハンドリング、パス、コート上で広い視野を持つことなど、あらゆるスキルをしっかりと磨くことが大事。そのことに私は早い段階で気づくことができたから、NBAでここまでやれているんだと思う。

公開中の動画では「バスケットボールを世界に広げたい」と力説した。競技がさらにグローバルとなっていくため、自ら伝道師となる。

カリー バスケットボールはどこでもできるスポーツ。アリーナや体育館だけでなく、電柱にバスケットをくくりつけて楽しむこともできる。プレーが純粋に楽しいということもあるが、高いレベルでプレーすることで、自分のキャラクターが構成されていくことも面白い。自分について教わることができる。

常にバスケットボールの魅力を表現し続けるカリー。彼が繰り出すプレーを、スポーツの祭典が開催される来夏の東京で堪能したい。

◆ステフィン・カリー 1988年3月14日、米オハイオ州生まれ。ホーネッツ、ラプターズで活躍した父デル・カリー氏の影響で競技を始める。デビッド大から09年ドラフト1巡目、全体7位でウォリアーズ入団。14-15年シーズンから2季連続で最優秀選手を獲得。特にチームを40年ぶりの優勝に導いた15-16年シーズンは、得点王やスチール王などのタイトルを手にし、史上初めて満票でMVPに選出された。NBA優勝3度。米国代表としてはW杯(世界選手権)での金メダル獲得に2度貢献。190センチ、83・9キロ。

<カリーアラカルト>

◆年俸 17年にウォリアーズと5年総額2億100万ドル(約231億円)の契約を結び、18-19年シーズンはNBA最高年俸の4023万ドル(約44億円)。CMなど副収入を合わせると年収は約93億円ともいわれ、米経済誌フォーブスによる「世界で最も報酬の高いアスリートランキング」でNBA選手としては2位に入った。

◆記録 15-16年シーズンに127試合連続3点シュート成功、シーズン402本の3点シュート成功のNBA記録を樹立。16年11月のペリカンズ戦では13本の3点シュートを決め、1試合のリーグ最多を更新(当時)。18-19年シーズンに7季連続3点シュート成功本数200本以上を達成した。

◆正確性 3点シュート成功率はルーキーイヤーから10季連続で4割以上を継続中。勝負強さにも定評があり、終盤の大事な場面で試合の行方を決める1本をしばしば決める。