B2仙台藤田弘輝HC 悲願B1昇格へ「やっていることをぶれずに続ける」

20日、東北カップ山形戦でガッツポーズをする藤田HC

若き指揮官が、悲願のB1昇格へと導く。今季からバスケットボールB2仙台89ERSの指揮を執る藤田弘輝ヘッドコーチ(HC、35)が、強度の高いディフェンスをベースにシーズンを戦い抜くことを誓った。11年に現役を引退後、指導者の道を歩み始め、11度目のシーズンを迎える。B1三遠、琉球でHCを5シーズン務め、琉球を2季連続で西地区優勝に導いた手腕の持ち主。これまでに培った経験を生かし、10月開幕のリーグ戦で旋風を巻き起こす。(敬称略)

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指導者として臨む11度目のシーズンが始まる。藤田は昨季までB1琉球に所属。今季は自身初のB2でタクトを振ることとなった。年齢は現在35歳。B1、B2全36チームの中でも、B2香川の石川裕一HC(30)に次ぐ2番目の若さ。だが、競技や勝利に対する情熱は誰にも負けない。

バスケットボールが大好きな少年が日本で夢を実現させた。埼玉県出身。だが、高校時代は米国でプレーしており、NBAプレーヤーになるのが夢だった。「バスケットを見るのが大好きで一日中、NBAを家で見ているような高校生でした」。しかし年齢を重ねていくとともに自分の身体能力を含め、夢への限界を感じてきた。「将来、バスケットボールに携わりたいなら何になろうか…。コーチになりたいという感じでした」と方向転換。新たな挑戦が始まった。

米国ハワイ大ヒロ校を卒業後、08年、bj浜松・東三河(現B1三遠)に選手として入団。10年、bj宮崎に移籍し、翌年に現役引退を決意した。翌シーズンから同クラブでアシスタントコーチ兼通訳を務め、指導者としてのキャリアがスタートした。これまでの10年を振り返った。

藤田 激動でした。27から35になるまで、20代後半、30代前半は青春時代だったり遊んだりがあると思いますが、そういうのはあまりなく、バスケットボールに費やした10年でした。

最初は苦難が続いた。HCに初めて就任したのが14-15シーズン。bjリーグ新規参入の福島(現B2)で初代HCを2季務めた。

藤田 1年目は、アシスタントコーチもいなかったので効率が良いとかではなく、自分が頑張ろうと。スカウティングを2日間くらい寝ないでする。毎週、それをやっていた日々が印象に残っています。

Bリーグとなった16-17シーズンからB1三遠、19年6月からB1琉球アシスタントコーチを経て、同12月、HCに昇格した。「去年(昨季)は琉球ゴールデンキングスで、今まで感じたことのないプレッシャーがあった。その中で自分なりにやり抜き通した」。周囲の支えを受けながら奮闘し、2季連続西地区優勝を果たした。

さらに19年にはサポートコーチ兼通訳として男子日本代表に帯同し貴重な経験を得た。

藤田 琉球で当時HCをしていた佐々宜央さんも、ずっと代表に関わっていて世界のスタンダードを持っていた。僕もそれを身につけられたのは大きいと思う。ディフェンスの強度とかはまさにそうで、ヨーロッパなどは、みんなフィジカルが強くて、手足もアクティブ。そういう部分を普通にしていかないと日本は世界に追いつけないと思う。そこを自分たちが率先してやりたい。

リーグが開幕する10月2、3日は宮城・ゼビオアリーナ仙台でB2福島戦に臨む。古巣との戦いであり、特別な思いも芽生えている。福島主将の菅野翔太(28)は、bj福島と三遠時代の「戦友」であり、14年から在籍し、今やチームの「看板選手」に成長した村上慎也(30)もいる。

藤田 菅野、村上をはじめ、かかわった選手が豊かな人生を過ごせればいいと思っています。(村上は)知り合いのコーチから「福島ファイヤーボンズはどうですか」と連絡を受けて、トライアウトで入団した。あれから今も福島にいて、成長して看板選手になっているのはうれしい。

8月の本格始動から、チームには強度の高いディフェンスを求め、磨きをかけてきた。シーズンはプレーオフも含め、約8カ月にわたる長き戦いとなる。

藤田 今やっていることをぶれずにやり続けて、どれだけ完成度を高くしていくか。そこは選手を信じているので、シーズン中は小手先ではなく、今やっていることを貫き通して、ぶれないチームにしたい。

今季は14クラブが2つの昇格枠を争う。16-17シーズン以来の昇格を狙う仙台を日本最高峰の舞台に押し上げてみせる。【相沢孔志、濱本神威】