フィギュアスケート全日本選手権<第3日>◇25日◇さいたまスーパーアリーナ◇アイスダンス・フリーダンス(FD)
夫婦で22年北京五輪を目指してきた、リズムダンス(RD)首位発進の小松原美里(29)尊(ティム・コレト=30)組(倉敷FSC)が代表1枠入りへ大きくアピールした。
FD2位の110・01点を記録し、合計178・17点で涙の大会4連覇。五輪切符を争う村元哉中(28)高橋大輔(35)組(関大KFSC)の同176・31点を上回った。結婚、国籍変更、選手生命の危機を乗り越えたカップルが、あとは天命を待つ。全4種目の北京五輪代表は今日26日夜に発表される。
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V4が決まったキス・アンド・クライで2人は熱く抱擁した。美里は「ここまで滑ってきた21年間、たくさんの方に支えられて心から感謝の気持ちでいっぱい」。尊は「良かったことも絶望もあったけど、美里と一緒なら乗り越えられる強さがあった」と妻の肩に手を回した。RD首位で迎えたFD。2日前は失敗したツイズルで最高評価のレベル4を獲得するなど最後まで改善を諦めず、FDとしては2位だったが4・81点差のリードで逃げ切った。
昨季まで全日本3連覇の第一人者は一転、後がなかった。ともに五輪出場経験を持つ村元、同郷岡山のスター高橋が参戦。美里が「一騎打ち」と表現した直接対決の第1戦、先月のNHK杯では7・30点差をつけられて敗戦。結成6季目が同2季目に苦杯をなめた。
今回勝たなければ北京切符は絶望的。拠点のカナダにも原因不明のビザ不給で戻れない中、もがいた。米国出身で昨年日本国籍を取得した尊の故郷コロラドスプリングズ、美里が生まれ育った倉敷で練習。衣装を高貴という紫に変え、女優の夏木マリに勝負曲「SAYURI」のナレーションを依頼し、歌舞伎役者の片岡孝太郎から演技指導を受けた。非公認ながら自己新の178・17点でリベンジすると、衣装のまま客席を駆け上がり、現地で生応援していた2人に感謝した。
16年5月。ダンスの国際トライアウトがあったイタリアで出会った。尊がロストバゲージに遭い、氷に乗れなかった2日間まるまる夢や競技や人生を語り合った。「会って3日目で完璧に合うと思った」と美里。翌17年に結婚するほど、ひかれ合った。19年には美里が2度、氷の上で倒れる。頭部外傷、脳振とう、外傷性頸部(けいぶ)症候群。一時は下半身が動かず、命の危険もあった。競技復帰後も後遺症に苦しんだが、美里の兄の夫人である女子野球の吉田えりと尊が協力し、治療を支えてくれた。極めつきは国籍変更だ。五輪に出るためティム・コレトは小松原尊になった。「母国より美里との夢の方が大事」と迷いはなかった。
勝利インタビューの後は村元、高橋組と健闘をたたえ合った。「大ちゃんたちの存在が練習を頑張る起爆剤になった」と美里。尊はティムの日本名を「帝夢」にすることも考えたほど王者になりたかった。そして勝った。26日の選考結果を「感謝の気持ちで待つ」(美里)だけだ。【木下淳】
◆アイスダンスの北京五輪代表選考基準項目と、該当する組は以下の通り。
〈1〉全日本選手権最上位組(=小松原組)
〈2〉国際スケート連盟(ISU)世界ランキング最上位組(=小松原組)
〈3〉今季のISU世界ランキング最上位組(=村元、高橋組)
〈4〉今季のISUベストスコア(=村元、高橋組)