<ラグビー・リーグワン1部:東京ベイ30-24静岡>◇第8節交流戦第2日◇5日◇東京・江戸川区陸上競技場
ウクライナ人の母を持つ静岡(旧ヤマハ発動機)のWTB中井健人(25)が、今季初先発で思いを届けた。前節終了時点で首位の東京ベイ(旧クボタ)戦にフル出場。24-30で敗れたが、前半にチーム最初のトライを挙げた。ロシア軍による母の祖国への侵攻が続く中で「いつも以上に感謝の気持ちを持ち、当たり前である平和な環境をありがたく感じた」と力を込めた。
必死だった。0-19の前半27分、左大外でパスを受けてインゴールに滑り込んだ。前身のトップリーグだった21年3月27日神戸製鋼(現神戸)戦以来、約11カ月ぶりのトライ。20点を追う後半10分には自陣左隅から約65メートル先の敵陣ゴール前にキックで運び、バウンド後にタッチラインを割った。今季の新ルールで攻撃権を継続し、その流れで生まれたトライで勢いづけた。福岡・筑紫高、法大を経て入団3年目。白のテーピングを巻いた左手には、黒のマジックで「PRAY FOR PEACE(平和を願う)」と記されていた。
親族は今もウクライナの首都キエフなどにいる。小中学生の頃は自らも訪れた経験があり、今は連絡をとれているが「おびえながら生活していると思う。今後も不安」と心配は尽きない。福岡に住む母とは毎日電話し「平和な日常にありがたみを持って過ごそう」と声をかけられた。その言葉を励みに「今できることは、ラグビーで母親や親族を喜ばせること」と誓った。
最後は6点差に追い上げ、勝ち点1をもぎ取った。「母も喜んでくれたと思う。でも勝てなかったのは力不足。満足できない」。10位からの巻き返しは、きっと希望になる。【松本航】