【展望】萩野公介氏、18日開幕世界水泳占う メダル高確率の本多灯&瀬戸大也 個人的注目は…

かつてのライバルや同僚との経験や思いを合わせて世界水泳の展望を語った萩野氏(撮影・垰建太)

水泳世界選手権が18日、ハンガリー・ブダペストで開幕する。

競泳は、18~25日の8日間で行われる。昨夏の東京オリンピック(五輪)で引退した16年リオデジャネイロ五輪400メートル個人メドレー金メダルの萩野公介氏(27)が24年パリ五輪に向けた第1歩になる今大会を展望。新生競泳ニッポンに向けてエールも送った。【取材・構成=益田一弘、奥岡幹浩】

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今回の世界選手権は、大前提として、世界的にフルメンバーではありません。まず強豪のロシアが出場しない。同じく強豪のオーストラリアが7月下旬の英連邦大会(コモンウエルスゲームズ)に注力している。そのために順位が変わる種目があるでしょう。これはお伝えしておかなければならない事実だと思います。

ただ相手が出てくる、出てこないという話は、どんな大会でもあることです。それをいい出すときりがない。それもひっくるめて試合です。例えば、昨年の東京五輪は男子400メートル個人メドレーの優勝タイムが4分9秒42でした(19年世界選手権銅メダル相当)。それでも金メダルは金メダル。勝負とはそういうものです。どんな状況であれ、メダルを獲得したという経験は必ず次につながります。

それを踏まえて、今大会の状況がプラスになるのは、男子100メートル背泳ぎの入江(陵介)さんです。ロシア勢がいないことで、すごくチャンスが出てくる。大先輩ですが、ぜひここでメダルをとって、自信をつけていただきたいです。

女子100メートル平泳ぎの玲緒樹(青木)もチャンスがあります。同い年でずっと一緒に平井先生(コーチ)の下で練習してきました。3月の日本記録1分5秒19は今季世界ランキング1位です。ポイントはラストのタッチ。コンマ何秒差で負けることが多くて。なんで最後のタッチで気を抜くのよ…。メダル、メダルと力まず無欲でいってほしい。

メダルの確率が高いのは、個人メドレーの大也(瀬戸)と200メートルバタフライの灯(本多)でしょう。

大也は、バタフライの調子がかぎです。他の泳ぎは波が少ないタイプ。優勝タイムが4分7秒台であれば、前半は1分59秒台で折り返せばいい。普通にいけば、勝つ可能性があります。

灯は、世界的に飛び抜けて2位だと思う。トップのミラク(ハンガリー)は、陸上ウサイン・ボルトのようにずばぬけている。ボルトは100メートルの世界記録9秒58。世界を見ても9秒6台がいない、9秒7台もほんの少しだけ、9秒8台がやっといる。ミラクは、それに近いぐらいの存在です。いまの灯に金メダルは現実的ではないですが、それは仕方ないところ。ミラクと自己ベストの差をどれだけ詰められるかでしょう。

1人のファンとして最も楽しみなのは男子200メートル自由形。いろんな国の選手がいる。カツオ(松元)には本当に頑張ってほしい。

東京五輪で金メダルを2個とった悠依ちゃん(大橋)。気楽にやってほしい、のびのびやってほしいと思っています。自分のレース、泳ぎをしてほしい。

僕は、人は幸せになるために生まれてきた、と思っています。いい結果を強く求めすぎるがゆえに不幸せになるなら、求めなくてもいいと。そう思ってしまうタイプ。いい結果が出たらうれしい、でも出なかったからといってどうこう言うわけでもない。ただ純粋にみんなを応援していきたいです。(16年リオデジャネイロ五輪金メダリスト)

◆萩野公介(はぎの・こうすけ)1994年(平6)8月15日、栃木県生まれ。作新学院高-東洋大-ブリヂストン。五輪は12年ロンドンで銅、16年リオで金銀銅、21年東京は200メートル個人メドレー6位。同種目で200メートルの1分55秒07、400メートルで4分6秒05は日本記録。昨年10月に引退し、今年4月から日体大大学院に進学。「チームブリヂストン・アスリート・アンバサダー」も務めている。

▼外国人選手も見逃せない。萩野氏は、東京五輪5冠に輝いたケーレブ・ドレセル(米国)について「いま一番のスーパースター。短い距離に特化していて、泳ぐスピードが純粋に世界で一番速い選手です。(テニスの)ジョコビッチや(米メジャーの)マイク・トラウトのような存在」。ドレセルは短距離の自由形、バタフライで圧倒的な力を持つ存在。世界選手権でも金メダル13個を誇る。

▼萩野氏は、4月から日体大大学院で「スポーツ人類学」の研究を行っている。大学院に週4回通い、研究の合間をぬってテレビ解説などに登場。今大会は「世界水泳」としてテレビ朝日系列で18、19日は25時、20~23日は24時45分、24日は24時50分、25日は26時30分から決勝セッションを連日放送(一部地域を除く)。萩野氏はスタジオ出演を予定。インターネットテレビ局「ABEMA」では予選から決勝まで完全無料配信。