<男子テニス:楽天ジャパンオープン>◇8日◇車いすテニス男子シングルス決勝
車いすテニスでは例がない1万人に迫る観衆がため息と感嘆のどよめきを挙げ、日本男子の世代交代をめぐる歴史に残る激戦を後押しした。東京パラリンピック男子シングルス金メダルの王者、国枝慎吾(38=ユニクロ)が、日本男子の次世代を担う若き天才、16歳で世界5位の小田凱人(東海理化)に6-3、2-6、7-6のフルセットで勝ち、19年に続く優勝を遂げた。
最終セット、敗戦まで残り2点と追い込まれた国枝は「彼が出てきて以来、いつかやられる日が来るだろうなと。それがこの日なのかなと何度もよぎった」。しかし、「まだまだおじさんのパワーを見せたい」と、追いすがる小田を振り切り、「こういった名勝負が何度も生まれる」と、歴史的な1日を振り返った。
国枝が、世界ツアーで日本選手に敗れたのは、06年7月の全英オープン準決勝が最後だ。04年アテネのパラリンピック男子ダブルスで金メダルを獲得したペアの斎田悟司に、フルセットで敗れた。それ以来、16年2カ月、日本選手相手に86連勝で、無敗を築いてきた。
国枝の絶対的な強さは、驚異的な失セットの少なさでも見て取れる。16年間に日本選手と戦った86試合中、セットを失ったのは斉田と三木拓也にそれぞれ、わずか2回ずつ。小田は、この日、第2セットを奪い、国枝が06年に敗戦を味わって以降、セットを奪った3人目の日本男子となった。
しかし、最終セットは国枝が5-1と大きくリード。第7ゲームで4本のマッチポイントを握り、勝負あったかと思われた。そこから、小田が、若さと挑戦者の勢いで、驚異の追い上げを見せた。5ゲームを連取し、一気に6-5と抜き去ると、第12ゲームで、国枝は16年ぶりの敗戦まで、残り2点と迫られた。
「もう少し勝たせてくれよ」と、土壇場でパラ王者の底力を見せた。5-6から小田のサービスゲームを破ると、タイブレークで振り切った。悲願だった東京パラリンピックは無観客。常々、「観客の前で、同じプレーを見せたい」と話してきた国枝。「長年、こういう舞台を待ち望んでいた。もう一つの夢がかなった」。国枝が刻んだ歴史が、新たな花を咲かせる日がもうやってくる。【吉松忠弘】
◆楽天ジャパンオープンは、10月3日から9日まで、WOWOWで全日生中継。WOWOWオンデマンドでも同時ライブ配信される。