国際水連がアーティスティックスイミング(AS)のルール改正を決めた。審判が演技を「10点満点」でトータルに採点する現行方式は、わかりにくい、序列があるなどの指摘があって、大転換。選手は事前に演技予定表を提出。フィギュアスケートのように、技ごとの難易度を決めて個別に採点する要素が追加される。指導者として、五輪10大会連続出場の「メダル請負人」井村雅代コーチ(72)が11日までに、ルール改正の意味を語った。【取材・構成=益田一弘】
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ASはめちゃくちゃ変わる。採点が可視化されて、どんな国でも失敗すればマイナスになる。わけわからん競技がちょっとわかりやすくなる。各国の序列(の変化)はすごいと思う。
今回のルール改正は前向きにとらえている。当然です。(東京五輪のような)あんなわけのわからない採点、許されへん。同調性は同調性で見る人、難易度は難易度で見る人、そしてアーティスティック全体の流れを見る人。個別に採点することはいい。ソロで言えば(世界一の)ロシアは、技の難易度は全然ない。切れ味だったり、速さはあるが、冒頭からの動きはギリシャ、オーストリアのほうが難易度をとっている。
最初はどんな点になるか、わからない。過渡期で審判がついていけるのか、ちゃんとチェックしてくれるのか、というのはある。でもフィギュアスケートのように技術点+芸術点(演技構成点)にしないと、今のように審判の主観いっぱいの方式ではだめ。最終的にはこうなっていくべきと思う。(ルール設定は)本当にむちゃくちゃ細かい。よくこんな個別の採点要素をつけたなというぐらいだ。
例えば、チームのリフトでは縦回転+ひねりがいる。回転は訓練だが、ひねりはセンス。リフトは難しい設定になった。
日本にとって、ルール改正がどう影響するか。チームは結構きつい。気をつけないとイタリア、スペインとかに負ける可能性がある。技術が持ち味の日本だが、新ルールで優位性のある技術をもっと身につけさせないといけない。チームとデュエットで難易度の高いプログラムを作れるかどうか。今夏の世界選手権で、デュエットのテクニカルルーティンは89点台の4位だった。ロシアがいない中で4位。何よりも80点台のスコアに危機感を覚えるべき。世界大会で日本が80点台をとった姿は記憶にない。
新ルールで行われる初の世界大会が、来年の世界選手権福岡大会。この大会は非常に重要だ。私が指導するソロの乾(友紀子)とは福岡で、世界最高難度をやろうといっている。ただやり始めると、乾は難易度の高いスピンを、音楽を無視して入れてしまう。「頼むわ、難易度高いのはええけど、音楽と全然あってへんやないの」となる。今はストップウオッチを持ってスピンの秒数を測っている。難易度の高い技は、やるべきことが多い=時間がかかる。時間がなくなると、演技の最後で、技が認定されず点がとれなくなる。技術の正確さ、動きの速さも必要。そしてアーティスティックインプレッション(芸術性)も両立させないといけない。
私たちは仮にロシアが出てきたとしても、金メダルがとれるように準備している。今年夏の世界選手権ソロ2冠をとったチャンピオンとして、福岡に臨む。そして乾の演技が、新ルールにおけるソロの基準になる。(前日本代表ヘッドコーチ)
◆ASの採点方式 国際水連が3日に決定した。従来は審判が主観で演技をトータルで評価して「10点満点」で採点した。新ルールでは技術+芸術性の「2階建て」となる。技術(難易度+完遂度)を見る審判、アーティスティックインプレッション(芸術性)を見る審判がそれぞれつけた得点を合計して、最後に同調性のズレを減点する。従来のように「100点満点」の中で優劣をつけるのではなく、フィギュアスケートのように得点が加算されていく方式。競技普及の妨げだった、採点のわかりにくさを解消する狙いがある。