【B1】仙台寒竹隼人「スラムダンクがなければ、僕はバスケをやっていない」スラダン愛語る

大好きな「スラムダンク」の単行本を片手に笑顔を見せる寒竹(撮影・濱本神威)

B1仙台89ERSの「カンチャン」ってどんな人? 「カンチャン」こと寒竹隼人(36)はトヨタ自動車アルバルク(現アルバルク東京)で09年からプロのキャリアをスタート。今季で14季目を迎えたベテランの原点は、国民的バスケット漫画の「スラムダンク」だ。スラムダンクに登場する天才シューター「三っちゃん」「ミッチー」こと三井寿に憧れ「スラムダンクの存在なくして僕のバスケ歴は語れない」と大きな影響を受けた。今回はカンチャンに“スラムダンク愛”を存分に語ってもらった。【取材・構成=濱本神威】

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「スラムダンクがなければ、僕は絶対にバスケをやっていない」。寒竹のバスケとの出会いは小学校低学年。「スラムダンク」が週刊少年ジャンプで連載されている頃だった。「スラムダンクが連載され、アニメも放送されて(テレビ朝日系列、93年10月~)『むちゃくちゃかっこいいな』と思った。それから、みんなでバスケを始めたのがバスケを好きになったきっかけですね」。だが、当時通っていた小学校にはミニバス(ミニバスケットボール)がなかったため「バスケをやりたい」という気持ちを持ちながら、友だちに誘われたラグビーに精を出した。その後、中学に入り念願のバスケ部へ。「絶対にバスケ部に入ろうと…。ずっと入りたくて、ようやく入れるって感じでした」。最初はラグビーと両方をプレーしていたが、自身の体格や特徴を考慮し「バスケのほうが輝きそう」と思い、中1の途中からバスケに専念した。

バスケを始めてから今年で23年目。プロとして14年目を迎えたベテランは今や仙台に欠かせない、頼れるスリーポイント(3P)シューターとなった。原点は「スラムダンク」に登場する三井寿だ。「僕は三井寿が好きで…。シューターというポジションに美学を感じていた。『かっこいい!』と」。中でもそのあきらめない姿に心を打たれた。「(三井の)シュートを打ち続けるところがかっこいい。ヘトヘト、ボロボロになっても、リングだけ見えているみたいな…。疲れているからシュートを打たないという選択肢がないところがめっちゃかっこいい。そうあるべきだなと思います」。憧れた三井の姿は、仙台で見せる寒竹の姿そのものだ。B1琉球から仙台に加入した一昨季の3P成功率は39.6%。昨季は34.3%とやや確率が落ちたが、あきらめずにシュートを打つ姿勢や要所で決めてくる怖さが相手のディフェンスを引きつけ、チームのインサイド攻撃を光らせた。「(シュートを)3本外しているからといって、4本目のチャンスが来たときに、打たずにパスをするというのは絶対にやりたくない。『絶対打つ』というプライドは負けていないと思います」。三井ばりのこのプライドが「カンチャン」の魅力だ。

「スラムダンク」から学んだことをブースターにも還元する。「湘北高バスケットボール部は全員キャラが濃くて、交わらなさそうに見える。でも、気持ちが同じところに向いたときの1+1じゃない強さや、バラバラの個性が団結したときの無限の力を(漫画から)学びました」。1+1が10にも100にもなるのは仙台にも言えることだ。「(僕らには)スーパースターはいませんが、チームでいかに+αを出していくかが僕たちの強み」。11月27日の川崎戦ではチーム全員がファイトし、天皇杯2連覇の強豪に競り勝った。「チームスポーツの素晴らしさは見ている人を動かすと思います。僕らがプレーの中で泥臭く助け合っている姿を見てもらって『明日からまた頑張れる』と思ってもらえたら最高です。明日への活力になれたら」。12月はホーム戦が6試合もあり、ブースターに多くの勝利を届けるチャンス。今季、B1に昇格したばかりの仙台にとっては、B1クラブすべてが格上の存在だが「僕らは、下から上にかみついてやるという気持ちで常にやっています。強豪に食らいついて、勝つ試合を1試合でも多く見せたい」と気合十分だ。

3日からは「スラムダンク」の新作アニメーション映画「THE FIRST SLAM DUNK」(井上雄彦監督)が公開される。「絶対に見ようと思っています。家族も見たいと言っていますが『まずは1回、1人で見させて』と言いました。また見られるとは信じられない。めちゃくちゃ楽しみです」。自身の原点をかみしめ、最高のパフォーマンスを発揮して今年を締めくくる。

■湘北ファイブをチームメートに例えると

“スラムダンク愛”全開の「カンチャン」に仙台の選手を湘北高バスケットボール部の面々にあてはめてもらった。「(主人公の)桜木花道はテラ(寺沢大夢=23)じゃないですかね。まだ不完全だけど、すごい才能を持っている。それが爆発したときはすごい力を発揮する。伸びしろがたくさんあって、おもしろいところが似ています。背番号も10。そのまんまですね(笑い)」。他にも「ゴリ(主将の赤木剛憲)はJB(ジャスティン・バーレル=34)、流川楓はセイヤ(田中成也=31)かな。宮城リョータはショータ(渡辺翔太=24)。木暮公延(副主将)は…ソルジャー(片岡大晴=36)? 明るい木暮ですね(笑い)。立ち位置でいえばそうですよね、精神的な支えなので。そこがいるからブレない。ミッチー(三井寿)、ここは俺って言っておかないと。俺でありたいですね(笑い)」。あまりにぴったりの人選に記者もうなってしまった。

◆寒竹隼人(かんたけ・はやと)1986年(昭61)8月1日生まれ。福岡県出身。福岡大大濠-拓大。07年ユニバーシアード、ベスト4。大学卒業後、09年トヨタ自動車アルバルク(現アルバルク東京)入社。11年、bjリーグドラフト全体2位で岩手に入団。以降、京都-岩手-島根-大阪-琉球-仙台。仙台は今季で3季目。194センチ、89キロ。

◆SLAM DUNK(スラムダンク)作者は漫画家・井上雄彦氏。「週刊少年ジャンプ」(集英社)で90年から96年まで連載。神奈川県立湘北高に入学した不良少年、桜木花道が一目ぼれしたバスケット部主将・赤木剛憲の妹晴子目当てにバスケットを始め、全国高校総体に出場するなど、主人公や仲間の成長を描いた物語。94、95年にはアニメ映画も公開。3日公開の「THE FIRST SLAM DUNK」は実に27年ぶりの映画。