体操男子のエースは「美しい体操をしたい」と繰り返した。
昨年11月の世界選手権(英国)個人総合で金メダルを獲得した橋本大輝(21=順天堂大)が14日、千葉県内で行われた「ユメトコメキャンペーン」千葉米贈呈式に登場。今年9~10月の世界選手権(ベルギー・アントワープ)代表が内定しており、1年半後のパリオリンピック(五輪)を見据える21歳は「日本の美しい体操をもう1度体現したい」と誓った。個人&団体での2冠を虎視眈々(たんたん)と狙う。
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21年の東京五輪で、個人総合を五輪史上最年少で制覇し、種目別鉄棒との2冠に輝いてから1年半。
24年のパリ五輪へ向け、橋本は美しさを追求しようとしている。
「昨年のリバプールの時は少し演技の完成度が低かったので、今年は完成度を上げたいです」
昨秋の英国・リバプール。
6種目で競う個人総合に臨み、ゆかでG難度の大技「リ・ジョンソン(後方かかえ込み2回宙返り3回ひねり)」を着地させた。鉄棒でもG難度の「カッシーナ」を決めた。
3度目の世界選手権で悲願の初優勝。五輪と世界選手権の両大会制覇は、内村航平さんに続く2人目の快挙となった。
しかし、団体総合では東京五輪と同じ銀メダル。橋本の心には「もっときれいに体操をしたい」という思いが湧き上がった。
英国から帰国し、母校の千葉・市船橋を訪れると、恩師の神田真司総監督からも「もう少しきれいに体操したいな」と語りかけられた。自分が抱いていた思いと同じだった。
体操界では通例として、五輪翌年にルールが改正される。昨年は難度変更に対応するため、新技への挑戦や着地に重きを置いたが、今年はさらなる進化が必要だと感じている。
「もう少しきれいに、かつ流動的に演技を見せられるようになれば、高得点も出ると思っています」
美への追求とともに、もう一つ強調したことがある。
団体総合での金メダル獲得だ。
柔らかな声に、強い覚悟を込める。
「団体で取ることが一番のうれしさだと思っています。表彰台の一番上に5人で立つことは、みんなでうれしさを共有できる。みんなで世界一を取りたい。世界一を取って、日本が一番だと証明したいです」
体操界を導く気概が、1つ1つの言葉となった。
千葉県成田市の兼業農家で生まれ育った橋本は、地元のお米を次世代へ普及するためのアンバサダーを務めている。この日の贈呈式に登壇した子どもたちからは、こんな声が上がった。
「夢は橋本選手のように、体操で五輪に出て金メダルを取ることです」「橋本選手のように、毎日コツコツ努力を積み重ねて、夢をかなえたいです」
1人1人の話にうなずき、優しい目をして誓った。
「小さな子どもたちに夢を与えるのはすごく大きいことだと思ったので、これからもそれに恥じない演技ができるようにします」
在学する順大へは、小さな子どもが懸命につづったと思われるファンレターも届く。
憧れの存在であり続けるためにも、若きエースは進化を止めない。【藤塚大輔】