東京五輪個人メドレー2冠の大橋選手が不在の中、女子400メートル個人メドレーで16歳の成田選手が素晴らしいレースをした。
バタフライ、背泳ぎの2種目を終えて4位。3種目目の平泳ぎに入ったが、焦らずストロークの大きな泳ぎで差を詰める。400メートル個人メドレーは自分の専門種目でもあったが、苦しくなるのは250メートルでターンしてから。成田選手はそこでトップに立つ。ラストの自由形も後半からしっかりギアチェンジしてスパート。持久力とスピードのレベルの高さを示し、200メートルに続き2冠に輝いた。
自分も高校時代から日本のトップを争った。ただし、今回の成田選手と違うところがある。自分には4歳上で世界選手権メダリストの堀畑(裕也)選手という目標が常にいた。レースを作ってくれる先輩がいたおかげで、重圧なく食らい付いていけた。しかし、この日の成田選手は大橋選手がいない中、日本最高峰の大会で、自らレースを作って勝ちきった。これはものすごく大変なことだし、自信と力になったはずだ。
優勝タイムは4分36秒89。自己ベストには0秒18届かず、大橋選手の日本記録には約6秒、同じ16歳のマッキントッシュ(カナダ)の世界記録には10秒以上も差がある。ただし、成田選手は、この日の最後の15メートルで、少し詰まった泳ぎになっていたし、スタートやターンでは他の選手に差をつけられるなど、改善点はたくさんある。ある意味、伸びしろしかないわけで、今後は楽しみしかない。
自分は高校3年だった12年ロンドン五輪で銅メダルを獲得したが、その前年の世界選手権は出場できなかった。成田選手はパリ五輪前年に自国開催の特別な世界選手権を経験できる。五輪1年前に世界トップと本気の戦いをすることは大きなプラス。パリの次のロス五輪でも大学4年。16歳の才能を温かく見守りたい。(16年リオデジャネイロ五輪金メダリスト)