【Vリーグ】山形苦節8年経てV1昇格「やり切った」勝利の瞬間、北原監督コート上で大の字

試合後、草島と抱き合って喜ぶ前田(中央)

<V・チャレンジマッチ:アランマーレ山形3-0姫路>◇9日◇女子最終日◇新潟・アオーレ長岡

酒田市、山形県の悲願がついに成就した。

アランマーレ山形(V2・1位)が姫路(V1・12位)にストレート勝ちで2連勝。15年の創部から北原勉監督(42)が目指し続けた「善くて強いチーム」が、8季目で初のV1昇格を決めた。今季はサーブから始まるトータルディフェンスを軸にした“超超攻撃型バレー”でV2初優勝。初進出のチャレンジマッチ(入れ替え戦)でも選手たちが躍動した。来季は、東北のチームでは14年に廃部となったパイオニア以来の日本最高峰の舞台に立つ。

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チーム発足から8年。2023年4月9日、待ちわびた瞬間が訪れた。セット(S)カウント2-0で迎えた第3S。北原監督は得点を重ねる度にガッツポーズを連発。勝利の瞬間は、コート上で大の字になった。「とにかくやった、やり切った」。ともに戦ってきたスタッフと抱き合い、選手とハイタッチ。大歓声の中、選手らの手の感触を背中で感じながら笑顔で3回、宙に舞った。

苦節8年。子どもが大人になるように、小さな1歩を積み重ねてきた。15-16シーズンのV・チャレンジリーグ2部では、2勝14敗で最下位。世代別日本代表やJTで指導経験がある指揮官は「忘れもしない」と、悔しさを胸に刻んだ。また、1年目のサマーリーグでは「西尾(博樹)GMが、チームバスを『どこの幼稚園バスですか?』と言われ、ショックを受けた」というほど、チームの認知度は低く、ランニングをしていた選手が高校生に間違えられたこともあった。

地域に愛される「善くて強いチーム」へ-。永遠の目標に向かってきた。バレーボールのクリニックをはじめ、小学校での食育授業といった地域貢献活動に積極的に取り組み、今季開幕前には「酒田観光スペシャルアンバサダー」に就任。チーム力も徐々に高まり、Vリーグ参入3季目となった20-21シーズンから2季連続3位。V2初優勝を果たした勢いそのまま、ついにV1昇格を果たした。

8年かけてつかんだ「V1切符」。V2での第1章を終え、V1での第2章が始まろうとしている。誰もが憧れ続けた「V1」は、北原監督にとってどういう世界なのか-。

「日本でバレーボールをやっている以上は選手もスタッフ全員が絶対に1度は味わいたい舞台。みんなで上がれたことはうれしいですし、最高の舞台でこういうチームがV1でもあるんだというところをお見せしたい」

支えてくれる人たちとともに「善くて強いチーム」はこれからも歩き続ける。【相沢孔志】

 

○…苦しい時間を糧に笑顔を咲かせた。前日8日、20得点を挙げた有村涼美(23)はV1昇格を決めた瞬間、ベンチから一目散にコートに向かい、歓喜の輪に加わった。

鹿屋体大(鹿児島)から加入したばかりの昨年5月、山形・蔵王合宿で右足底腱膜断裂の大けがを負った。「友人が近くにいなかったこともあり、なかなか最初は(復帰への)モチベーションが保てなかった」が、周囲の支えもあり、9月には走れるまでに回復。10月の開幕戦では12得点と鮮烈なデビューを果たした。チームでは過去に木村が右アキレス腱(けん)を断裂。カムバックした姿を見た北原監督にはある“確信”があった。

「大きなものを経験した方が(選手として)大きくなると僕は思っている。木村の時もですが『マイナスになることだけじゃないというのは分かるよな?』と言いました」

有村は「自分(涼美)がバレーをしていることで生きがいを感じる」という祖父母の応援に応えるため全力プレーを続けてきた。来季はさらに大きな舞台に活躍の場を移す。逆境を乗り越え、チームに欠かせない存在となった注目の若手を、V1が待っている。

○…開幕前、北原監督が「キーマン」と位置づけていた前田美紅(24)は第2セット、24-23の場面で「自分に上がってくることが分かっていたので思い切ったプレーをやった」とスパイクで得点。チーム最多16得点の活躍で歓喜をもたらし「この瞬間のために苦しいトレーニングをやってきたので、最後に(得点が)決まった瞬間は素直にうれしかった」と笑顔を見せた。

昨年7月のサマーリーグでは多彩な攻撃を披露。18年の木村以来となる「フレッシュ・スター賞」を受賞。出場機会も増え、昨季からはアタック決定率、サーブ効果率、サーブレシーブ成功率がいずれも良化。来季に向けては技術向上を図りつつ「後輩が成長できるように、気持ちの面でも助けられるようにやっていきたい」とサポートを誓った。

▽木村友里主将(27=V1昇格を決め)「去年負けたところからこの日の瞬間だけを考えて1年やってきた。苦しい思いを共有しながら最後は『笑って終わろう』と話していたので、それが実現できてうれしい」

▽伊藤摩耶(26=熱戦を振り返り)「1年を通して自立と共有という部分で苦しい思いをしながら、考えることをやめずに話し合って自分たちで決めてきた。コートの中と外も常に会話しながらできたことが今日勝てた一番の要因」

▽オケケアル・メソマチ(20=両軍最多4ブロックで勝利に貢献)「私はアランマーレの中で一番背が高い。(今季の)ブロック賞を取って、チャレンジマッチでも頑張ることができた」