卓球女子団体で12年ロンドン、21年東京五輪銀メダル、16年リオデジャネイロ五輪で銅メダルを獲得した石川佳純(30=全農)が1日、現役引退を表明した。自身のインスタグラムで「やり切ったという思いが強い」などと報告した。19歳だったロンドン五輪では平野早矢香(38)、福原愛(34)と日本卓球界初のメダルをつかみ、28歳で迎えた東京五輪では伊藤美誠(22)、平野美宇(23)を主将としてけん引。世代を超えて親しまれた功労者は18日の記者会見で思いを伝える。
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2月に30歳を迎えた石川の節目の日がやってきた。「大会毎に『この試合が最後になるかもしれない』と思いながら臨み、今、自分の中ではやり切ったという思いが強く、引退を決意した次第です」。7歳から卓球を始め、23年に及んだ現役生活。16強で終えた4月のWTTチャンピオンズマカオ大会を区切りとした。
日本卓球界を世界へ引き上げた功労者だった。小学6年生で出場した全日本選手権では大学生らを破って3回戦進出。トップ選手だった福原愛さんにちなみ「愛ちゃん2世」と脚光を浴びた。14歳で日本代表に名を連ねると、五輪に3大会連続出場。団体では12年ロンドン大会で福原らと日本卓球史上初の「銀」獲得に貢献。16年リオデジャネイロ大会で銅、日本選手団の副主将を務めた21年の東京大会では銀に輝いた。シングルス最高成績はロンドン大会の4位。この日も「長い間、世界のトップレベルで戦ったこと、たくさんの夢を叶えられたことを幸せに思います」と記した。
リオ五輪後は急速に進んだ世代交代の流れに直面した。東京五輪を目指した道は、限界を指摘する雑音にあらがう日々。ベテランと呼ばれ「若い選手の方が中国選手に勝てる」「卓球が時代遅れ」と心ない声を漏れ聞いた。卓球台に張り付いて前陣で球をさばく高速卓球が主流になる中、中陣が主戦場だった石川は前陣でも戦えるよう訓練を重ねた。21年全日本選手権決勝では伊藤を逆転で破り、5大会ぶりに復活優勝した。
21年東京五輪後も第一線で競技会に参加。24年パリ五輪代表は国内の選考会、国際大会のポイントなどで争う日本独自の選考レースとなった。世界ランクでは伊藤、早田ひなに次ぐ日本勢3番手の11位だが、パリ五輪選考レースでは5番手。昨秋の五輪選考会では2回戦敗退で涙を流し、選考ポイントの高い今月の世界選手権(南アフリカ)を逃すなど厳しい立場となっていた。
新旧ライバルとしのぎを削り、10年以上も第一線で走り続けた。1月の全日本選手権で4強入り。「五輪選考のポイントがついてきますが、自分が勝つこと、強くなることを忘れず、目の前の試合を戦っていきたい。長く続けてきたことで学んだこともたくさんある」。その背中は、次世代選手の道しるべとなった。
「ライバルでもあり、友人でもある選手たちにも感謝を伝えます。競技に対する姿勢、勝負の難しさ、厳しい競争の中で学んだことはたくさんありました」
希代のサウスポーの足跡は、いつまでも色あせない。【松本航】