【世界水泳】荒田恭兵20位「顔にやけている」ハイダイビング日本人初出場で注目度↑/一問一答

サムアップポーズを見せる荒田恭兵(2023年7月25日撮影)

<ハイダイビング:世界選手権>◇27日◇第14日◇福岡・シーサイドももち海浜公園

ハイダイビングで日本人初出場の荒田恭兵(27)が、23人中20位で2日間の競技を終えた。

7階建て相当の高さ27メートルの台から、25日に前半2本、この日に後半の2本を飛んだ。合計222・65点を記録した。

荒田は日体大4年だった17年日本選手権でシンクロ高飛び込み優勝。卒業後に日本初のハイダイビング選手に転向し、福井の観光名所「東尋坊」を練習拠点とする。注目度が急上昇した大会を終えて、思いを語った一問一答は以下の通り。

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-4本を飛び終えました

荒田 本当に感謝しかないです。今まで散々「競技人口が(日本で)1人しかいない」とうたっていて、実際にやっているのは1人かもしれないけれど、その裏には本当に多くの人の支えがある。それで自分を奮い立たせていて、ようやくここまでこぎ着けた。世界水泳福岡という、この素晴らしいステージで演技を4本できたと思います。まずは感謝を、皆さんにお伝えしたいと思います。本当にありがとうございます。

-今日の2本目は難度はベストでしょうか

荒田 自分の中で一番難しい演技でもありますし、完成度は「良かったな」と思うところと「もうちょっと」というところもあったので、そこそこかなと思います。

-一昨日に2本目を終えた時点でニュースでも流れましたが、反響はありましたか

荒田 いやぁ、とんでもなかったですね。いろいろな人から「出てたよ」「見たよ」というコメント、メッセージがすごくきていて、それだけ注目していただいている。その注目に恥じない演技だったり、立ち居振る舞いをやっていかないといけない。奮い立ったし、うれしかったです。自分も飛び込み競技をやっていたけれど、その時とは比べものにならない声援を今回、浴びたと思います。この感覚をかみしめて、次の糧になるようにしていきたいと思います。

-今後も世界選手権に出てみたい思いはありますか

荒田 これからももちろんハイダイビングを続けていきたいですし、自分自身も現時点で出せるパフォーマンスは、ほぼほぼ出せたと思います。でも出した先に、また伸びしろが見えてきた。もっともっとトップの選手に食らい付いていける可能性が出てきたと思います。ハイダイビングという、27メートルのプラットホームがなかなか日本では練習できなかったけれど、もっと27メートルで練習する経験を積んでいって、少しでもハイダイビングで活躍している先人たちに、挑んでいけるようにしたいと思います。

-街だったり、水泳と関係のないところにも広まっている感覚はありますか

荒田 昨日とかも外に食事を食べにいって、店員さんに「荒田選手ですよね?」と言われて「マジかぁ…」って思いました。すぐそこのショッピングモールのレストランです。びっくりしたし、ありがたい。1週間前ぐらいに用事があって福岡の街に来た時も、以前に自分が出た番組だったり、世界水泳に出場することを知っている方がいて、店員さんに声をかけてもらった。その時からモチベーションが上がる瞬間が多かったです。それだけ知らない人にも行き届いていて、自分自身でもハイダイビングの情報をSNSで発信してきたつもりではあるんですけれど、どうしても1人で発信できる量は定められている。あらためてメディアの皆さまに広めていただける重要性が、痛感できた瞬間です。

-これからのターゲットは「次の世界水泳…」とその都度、定めていくのでしょうか

荒田 この種目自体も今、オリンピックに取り入れてもらえるようにハイダイビングの委員会の方が働きかけている。パリの次の(28年)ロサンゼルスの五輪で、まだ分からないけれど「もしかしたらなるんじゃないか…」という話も出ている。五輪種目になったら、自分もそこに照準を合わせて、飛び込みではかなわなかった「オリンピック選手」というのがかなうかもしれない。他の団体の試合ももちろんあるので、そこにもコンスタントに出られるぐらい実力をつけていって、いろいろな人にもっと見ていただける機会をつくっていきたいと思います。

-今回の大会で日本水連の方だったりと話したりはしましたか

荒田 とりあえずは今は種目に集中していたので、これが終わってから、反響だったり、試合の成績を含めて、どういう風に取り組んでいくかを進めていかないといけない。自分1人では進められないことも確かにある。自分は演技の方をしっかり、その他のところで準備をしていただくことになるところには、しっかりコミュニケーションをとっていって、状況を伝えないといけない。今回、代表として出させてもらっていて、すごくいろいろな方に支えてもらっているのが分かりました。支えてもらっているからこそ、1人だけれど、支えてもらっているなりの動き方をしていかないといけないと思います。

-飛び込みの経験者を勧誘したい思いはありますか

荒田 自分はたまたま短期間で27メートルまでできちゃったパターン。みんながみんな、そうじゃないと思います。もし興味を持ってくださった人がいれば、ちょっとずつ自分の経験を交えながら「この練習したらいいよ」などと導いていけたらいい。でも、今はまだ勧誘をする状況ではないのかなと思います。自分自身の成績、経験も浅い。確固としたルートを今も継続的に築いていっているところですが、もっと自分以外の方に「挑戦してみたいな」と思える誘い方ができるようになってからだと思います。

-ご自身の認知度も上がった実感はありますか

荒田 本当にこうやって注目していただいて、浮かれているわけではないですけれど、正直にうれしいですし、今も顔がにやけていると思う。注目があるからこそ、チャンスだと思って、ハイダイビングがどういったものかを正確に伝えていって、正しい印象や情報を持った上で応援してくれたらうれしいです。自分も最初はイメージしかなかったけれど、実際にやってみてどうだったか分かった。やってみて分かった人から受け取る情報の方が、確実性があると思う。その上でこの競技がどういうものかを感じてもらって、その後に応援するかどうかを、定めてもらえたらと思います。

-選手が飛ぶ前に水中のダイバーが水しぶきをあげているのは、ターゲットを示すためでしょうか

荒田 水しぶきをバシャバシャすることで、水面との距離感を(選手が)狙いを定めている時に分かりやすくするためです。水との距離感が分からないと、体を締めるタイミングがずれて(水面に)当たり負けをする。そのタイミングをつかむために、体を開いた瞬間に水がどこにあるのか、体をどう使えばうまく合うのかを感じるために、ダイバーさんに水しぶきをあげてもらっています。

-コロナ禍を抜け、海外で練習したい思いはありますか

荒田 海外にも行きつつ、日本でも崖とかを探すっていうのは続けていくと思います。どうしても練習環境の部分で海外の選手に比べたら、行くまでのハードルがかなり高い。そこもクリアにしていかないと、勧誘するにもしようがない。まずは海外の練習できる場所に行きつつ、日本でも少しでもいい練習環境になる場所を、引き続き探していきたいと思っています。

-今回の露出でスポンサーからのコンタクトはありましたか

荒田 実際にいろいろなメッセージをいただく中には、そういった声もあります。この間、テレビ番組に出させてもらった時からですね。

-ロサンゼルス五輪は30代になる。競技を何歳までやりたいですか

荒田 上の人は39(歳)とかですし、その中で自分はまだまだ中堅未満だと思うので、まだやれると思います。自分で限界は定めていないです。「もうダメだ」と思ったところが限界。そう感じないうちは、まだいけると思います。もう10年はやりたいです。

-見ている人が「クレイジー」と言っているが、それは褒め言葉ですか

荒田 褒め言葉です。素直に褒め言葉として、受け取らせていただきます。

-一番沈んだときは、どのぐらいまでいきますか

荒田 今回どうだったかな、あんまり下までいくことはないです。(水深)6メートルもあれば、下につくことはあんまりないです。皆さん結構高さがあるから「深さも結構必要なんじゃないか?」と言う方もいるのですが、高さが上がれば上がるほど加速するので、水に当たる時の衝撃が強くなる。抵抗する分、そんなに下までいかないです。そこはちゃんと考えて、こういう設備になっています。

-ここに立てたターニングポイントはありますか

荒田 明確なポイントとしては、今年の1月下旬から2月にアメリカのフロリダにプールがあって、そこに合宿に行きました。そこに行くまでは27メートルを飛ぶこと自体に1年半ぐらいブランクがありました。そこで合宿の期間を長めにとって、大会に出場できる資格を取れたので、そこがなかったら、今、この会場が飛べていないです。その時は連盟さんの派遣で行かせてもらったので、そこはターニングポイントですし、世界水泳の会場で演技をやり終えられてリターンできたのかなと思います。結果がもっと伴っていれば良かったかもしれませんけれど、これが今の自分の精いっぱいです。

-フロリダには、そういった設備があるのですか

荒田 あります。これ(仮設)よりも飛び込みのようにコンクリートで作られていて、年中使えます。そこに練習しにいく選手は多いです。

-拠点の東尋坊も15~20メートル。28メートルを満たす崖は国内にもあるのですか

荒田 あることはあるんですけれど、やっぱり実用的じゃなかったりする。そこは崖探しで難航するところ。本当に目を付けられるところはつけつつ、タイミングを見計らって、飛べるかどうかを調査しにいく感じですかね。