【フィギュア】本田真凜、単独インタビュー「ワンピース・オン・アイス」ビビ役に「演技に興味」

「ワンピース・オン・アイス」でネフェルタリ・ビビを演じる本田真凜(撮影・河田真司)

フィギュアスケート女子の本田真凜(21=JAL)が今夏、人気アニメ「ワンピース」を題材としたアイスショー「ワンピース・オン・アイス」でヒロインのビビ役を演じる。11日から横浜公演(KOSE新横浜スケートセンター)で幕を開けるショーは、キャラクターの再現性が求められる舞台。16年世界ジュニア選手権を制するなど、国際舞台でも活躍してきたスケーターとしての表現力も力に、新たな領域に挑む心境を聞いた。役者への意欲、競技者としての今後、スケートに向き合う心境を語ったロングインタビューです。【取材・構成=阿部健吾】

<演じ方の違い>

-役者は今までやったことないとおっしゃっていますが、スケートでも作品を演じてきました。例えば、振付師のローリー・ニコルさんなど、表現について教わり、自分でも研究してきたことだと思います。今回は何が一番違いますか。

本田 小さい時からスケートの一番好きな所が表現の部分で、こだわってやってきた方だとは思います。スケートの場合は1つのプログラムを自分なりにストーリーを考えたり、元々ストーリーがあるプログラムは、それに沿って自分なりに、振付師の先生に言ってもらえたことを表します。正解がないと言いますか、自分のその日の感情などをすごく表せる感じと自分は認識しています。今回の「ワンピース・オン・アイス」はそれぞれのキャラクターの正解がある。いかに自分が近づけるか、完成度、再現度を上げられるかが違うのかなと思います。ここに効果音が入る、セリフのタイミング、それらも全て決まっているので、間違えられないですし、失敗も許されない空気感の中でやっています。

-例えばニコル先生は、よく抽象的な表現で指導されますよね。その中で自分なりに解釈されてやられてきたんですね。

本田 そうですね。最初から最後まで自分で、例えばクラシックなどなら、全部ストーリーを考えてやったこともあります。振り付けの方と相談しながらなんですけど、曲がパッて流れた時に即興で作るみたいなのも小さい時から結構得意で。(有望新人合宿の)野辺山などでもやってきました。今回はキャラクターを自分で再現する、スケートで再現するので、新鮮であり、新しい感じの取り組みかなと思います。

-新たな取り組みの中で、新しいフィギュアスケート観を感じることは。

本田 最初は本当に、金谷さんや宮本賢二先生と、あとテルさんという振り付けの方も、どんな風になるのか、みんながみんな想像がつかなかった部分もあったと思います。私たちも最初の2、3日は「このセリフの場所でこういう感じで動く」など、大ざっぱな感じだったんですけど、最近は細かく決まってくるようになって、どんどんやりやすくなってきて。最初は役者に近い感じの方が大きいのかなと感じていました。今は、スケートの良さを出せるように、どういうふうにセリフと合わせてスケートができるのかを考えるようになり、「ここで止まってるだけよりも回った方がいいんじゃないかな」とか。自分たちから相談させてもらったり。それぞれ思いがあって、真剣に考えて向き合えているなと毎日感じてます。

-今日の練習でも、麦わらの一味を見つめる場面で、最初は止まって見ていた流れから、滑られる演出に変えた場面がありましたね。

本田 船に向かってのシーンなので、原作では描かれてない、アニメでは映ってない場面でのビビの表情を、会場ではお客様が見えることになるので、自分で解釈する部分も多くなってきていて。最初はビビがしゃべってないシーンは麦わらの一味がメインの振り付けだったんですけど、後ろ側のお客様たちは滑ってきてくれたりする方がうれしいかもってカルー役の河野有香ちゃんと話し、それを賢二先生にお伝えして、新しく振り付けができました。日々そんな感じで、みんなで工夫しながらやっています。

-アイスショーはいろんな方向からお客さんが見ています。舞台などは、観客が一方向から見ることを前提にしている場合が多く、アイスショーならではの演出ですね。

本田 麦わらの一味を見つめるシーンは、私の後ろのお客様からしたら、ずっと背中を見ることになります。だから、背中で泣いてるとか、悲しいとかを表現できればいいなと思っています。難しいなと思うところもあり(妹の)望結にも聞きながらは模索してます。ショーならではの演出があってもいいのかなと。

-望結さんは小さい頃から子役としても活躍されています。経験を感じますか。

本田 すごいです。自分なりの正解を持ってる。ここはこうしたらいい、こう思うなど、ズバッと言ってくれるので、みんな助かっていると思います。やってみると、本当に良くなるので、長年やってきたことは本当にすごいなって見てます。

<「楽しさ」の再発見>

-いま本田さんの中でいろんなジャンルに挑戦されてきてますが、どんな意味がありますか。

本田 ジュニアの時と比べると、スケートが好き、試合が好き、楽しいみたいな気持ちよりも、シニアに上がってから、ちょっとどうなんだろうって自分で迷う部分みたいなのもあって。今回ワンピースの稽古は大変ではあるんですけど、「自分ってスケート好きなんだな」とすごく感じています。自分としてもとても大きい収穫だなと。みんな言ってるんですけど、この稽古期間がもうちょっとで終わると思うと、とても寂しい。みんなで1つのものを作り上げたり、新しいジャンルのスケートを学べているのがすごく楽しくて。ずっと朝から滑っていても、スケートが好きだなとか楽しいなっていう気持ちを感じています。

-スケートを始めたころの楽しさですね。

本田 そうですね。もうできるようになることが増えていく日々で。そういう部分でも、みんなにとっても私にとっても充実した日々です。

-スケート以外の挑戦をすごく増やしてらっしゃるなという印象もあります。

本田 今回、演技に関しては、「ワンピース・オン・アイス」でやってみて、もっと興味を持ちました。自分が小さい時は、まさか望結みたいにできるわけないって感じだったんですけど、スケートと演技ってちょっと近い部分もあったりするのかなって最近感じていて。その中でビビを演じるという経験をさせていただいて興味を持ちました。新しくこういうこともやってみたいなって。

-今までと違う気持ちですね。

本田 新しい感情ですね。全然できるわけないって感じでしたが、やってみたらすごく楽しくて。自分とは違うキャラクターを演じるのが、もしかしたら得意なんじゃないかなと思ったりしています。

-セリフを覚えて演じたことはなかったですか。

本田 全くなかったです!キャラクターを演じる、完成度、再現度に向けて研究していく過程や、演技している時とかもすごくやりがいがあり、楽しいです。

-ちなみに学芸会などで演じたことは。

本田 学芸会! やってましたね。でも恥ずかしくて。普通、多分そうじゃないですか、人前で演じるのは恥ずかしくて。今回もみんな最初そんな感じで。周りを気にする感じだったんですけど、どんどん気持ちが入るようになってきて。

-フィギュアの試合では堂々とされてます。

本田 スケートに対しては恥ずかしいっていうものは全然なくて。でも、演技は自分がやったことがないジャンルだったので。あんまり普段、わーって怒ったりすることがなく、ビビはそういうシーンが多いので、どうしようって。

-恥ずかしさは。

本田 全然ないです! みんなの演技も完成度が本当に高くて、見入ってしまいます。

<スケート人生のこの先>

-ビビの役柄は、国を守りたい強い気持ちがあり、それを実現させる。本田さんの中で実現したい、達成したいことはありますか。

本田 一番近い目標だと、この「ワンピース・オン・アイス」を本当にみんなでベストな状態でやりきったって思えるショーにしたいです。だから、いろんなことを相談したり、いろんなことを言い合って成長していってる感じなので、一番近い目標だと、本当にショーを完成させたいです。

-フィギュアスケートに関しての目標はありますか。

本田 やっぱりもう20年ぐらいスケートやってて。でも、やっぱり今までやってきた年月よりはもう終わりの方が近いかなっていうのは、最近、ここ数年は考えるようになってきて。自分がやりきったっていう状態で終われるのが一番ベストだと思うので。1つ1つの、自分の本番だけじゃなくて、練習とかも毎日を大切にしたいなっていうのはすごく思っています。

-さきほど、シニアに上がってからは楽しい時期だけじゃなかったと仰っていました。それでも逃げないでずっと向き合われてきたと思います。

本田 やっぱりスケートをしてない自分っていうのが全然想像できなくて。本当に苦しいなって思う時期とかもあったんですけど、それ以上にスケートがない、練習する日々がないのが怖いじゃないですけど。そういう気持ちがすごくあったので、スケートは一番の近い存在でしたし、これからもそうなんじゃないかなとか思います。この前、シェイリーン(・ボーン)さんとお話しする時があって、「滑ってないないと落ち着かない」と。1時間でも、誰が見てなくても、自分で滑りに行って、氷の上で適当に踊って帰るみたいと聞いて。もしかしたら自分もそういうタイプなんじゃないかなと。

-楽しさの再発見という意味でもこのショーは大きかったですね。

本田 ほんとにそうだと思います。このショーは、自分にとってすごくいい期間というか。滑ってて今はすごく楽しいです。

<日程>

横浜公演 8月11~13日、KOSE新横浜スケートセンター

名古屋公演 9月2~3日、ドルフィンズアリーナ(愛知県体育館)

<出演者と役>

モンキー・D・ルフィ 宇野昌磨

ロロノア・ゾロ 田中刑事

ナミ 本田望結

ウソップ 織田信成

サンジ 島田高志郎

トニートニー・チョッパー 渡辺倫果

ネフェルタリ・ビビ 本田真凜

コーザ 友野一希

クロコダイル 無良崇人

ミス・オールサンデー 小川真理恵

Mr.2ボン・クレー 本郷理華