フィギュアスケートで16年世界ジュニア女王の本田真凜(JAL)が21日、22歳の誕生日を迎えた。
明治大4年生の節目の1年を過ごす中で、今夏はアイスショー「ワンピース・オン・アイス」に出演。競技者としても秋からのシーズン本格化に備えている。誕生日2日前に都内で開いたファンイベント後に、ファンへの感謝、現在のスケートに対する思い、未来への考えを明かした。【取材・構成=松本航】
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8月19日、都内でファンとの交流イベントを開催すると知った。
普段の競技会の取材では演技の内容、次戦への意気込みなどが中心となる。
22歳の誕生日を前に、今、どのような思いを胸に抱いているのか-。
主催者を通して取材の相談をすると、時間を用意してくれた。自身のグッズを手にし、抽選で選ばれた数十人のファンと約20分のトークショーで交流。チェキの撮影を終えた本田の表情は、生き生きとしていた。
「同い年で『小学生の頃から応援しています!』とおっしゃる方もいました。『そんなに長く応援してくださっている方もいるんだ…』と思いました。皆さん、本当に来るだけで大変なのに…。ありがたいです」
ジュニアだった中学生の頃、本田から聞いた印象的な話がある。いつも演技前の練習では会場の4方向の客席に目をやり、観客の中から4人の“ターゲット”を見つける。緊張感ある競技会本番、その4人に感情を届ける演技を心がける。多くの選手がジャッジを意識する中で、幼少期から自然と続けていた意識に驚いた。懐かしい話をしながら、本田は穏やかにほほえんだ。
「演技中に自然といろいろな人を見るんです。だから正直、今日来てくださった方々の顔も分かります。SNSのアカウント名を教えてもらったらすぐ分かるんです。お会いできてうれしかったですし『バレエをやっていて…』『テニスをやっていて…』と現役で頑張っている同世代の方もいらっしゃる。お互いに頑張れる、そういう存在であれたらいいなと思いました」
インスタグラムのフォロワーは125万。アマチュア選手では破格の注目度がある一方、SNSとの向き合い方には悩んできた。応援のメッセージを読もうとした際に、ふと胸を突き刺すような内容も見かける。
「自分から探すわけでなくても、どうしても目に入ってきます。小さいころから、そういうのは慣れている方だとは思うんですけれど、気持ちが落ちている時に1つ見てしまうと、100%刺さってしまう。最近、気持ちが落ちている時はメッセージそのものから、離れるようにしています」
心が落ち着いている時は、ファンからのメッセージを開く。それが支えになっていることも間違いない。
「『スケートの動画を見て、元気をもらっています!』などと言ってもらえることが、自分のやりがい、モチベーション、原動力です。『いつか感謝をしっかりと伝えられる場があったらいいな』と思っていました。今日もその1つで、伝えられて良かったです」
多忙の合間を縫い、ファンと間近で交流する機会を設けた大きな理由だった。
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一般的なイメージと合致するであろうサバサバとした性格だけでなく、取材を通して中学生のころから人を喜ばせようというサービス精神、気遣いを感じることが多かった。スケート界は競技会に出場する「アマチュア」、アイスショーなどを主に活躍する「プロ」の大きく2つに分かれる。
22歳。プロの世界に対する思いを聞いた時、開口一番に「もちろんそれはすごく興味があるんですが、興味があるからといって、見てもらえるかは別だと思っています」と言い切った。謙虚な姿勢で、まずは観客の立場をおもんぱかった。そこから「そういうことを置いておくとして…」と前置きし、正直に口にした。
「人の心に届ける“全振りした演技”って、他のプロの方を見ていても心に響きます。点数に左右されない。『ワンピース・オン・アイス』をやらせてもらって、特にそれは感じました。いかに見てくださっている人に届けられるか。そういう気持ちで頑張るのも、とてもすてきと思います」
7月は「ワンピース・オン・アイス」の稽古に費やす時間が多かった。午前5時に起き、夜中の稽古をこなして帰宅することもあった。同時に学業面ではテストも重なった。多忙な日々だが、得たものは大きかった。一方、競技者としての立場からも逃げていない。
「現役ですし、ルール内でのジャンプ、レベル獲得も競技としての魅力の1つだと思います。初心はそこにあると思いますし、勝ち負けがあって、点数で勝負するのも魅力と思います」
節目の1年。現時点で「大学4年生で(競技者を)やめるかも、正直分からないんです。『自分が好きなスケートを追求できる場所がある限り、やっていたい』というのは、今の時点で思っています」と明かした。意識的にゴールを定めるのではなく、日々を大切に、その時々の感情を大事に過ごしたいと考えている。
「正直、10歳の時は『16歳で引退しよう』と思っていました。実際に16歳になってみると、スケートのない生活が考えられなかった。スケートが好きなんです。今も結局、自分が一番大事にしているものはスケートなんですよね。うまくいかなくて『やめたいな』と思ったことも、たくさんありましたが、2日間の休みがあるだけでもソワソワするんです。それぐらい、競技なのか、人に見られるのか、は関係がなく、スケートが、自分の中で必要不可欠なものになっています」
山あり谷ありのスケート人生。今季がシニア7季目になる。大好きなスケートを通して、これからも自分を表現する。支えとなる存在の尊さをかみしめ、シーズン本格化の秋へと進む。
◆本田真凜(ほんだ・まりん)2001年(平13)8月21日、京都府生まれ。2歳からフィギュアスケートを始める。12年全日本ノービス選手権で当時の歴代最高得点で優勝。全日本選手権はジュニアながら初出場の15年9位、16年に4位。16年世界ジュニア選手権で初出場初優勝を飾り、17年は2位。昨季の全日本選手権は26位。家族は両親と姉、兄、妹2人。姉をのぞく4人が競技者として切磋琢磨(せっさたくま)した。妹の望結はスケートと女優業と両立。163センチ。