シンガポールで開催している水泳の世界選手権は27日、競泳が始まる。日本勢で最も期待が懸かるのが24年パリ五輪男子400メートル個人メドレー銀メダルの松下知之(19=東洋大)。世界記録4分2秒50を誇るパリ五輪金の絶対王者、レオン・マルシャン(23=フランス)との直接対決を見据えてきた。16年リオデジャネイロ五輪同種目金メダルで、日本記録4分6秒05を持つ萩野公介氏(30)が注目ポイントを解説した。【聞き手=松本航、益田一弘】
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松下選手は世界選手権選考会だった3月の日本選手権で、パリ五輪の自己記録を更新しました。0秒01だけかもしれないですが、中身が全く違う。五輪銀メダル以上は金メダルしかなく、そこにマルシャンが立ちはだかる。現状の自己記録の差は6秒以上あり、縮めるには前半の200メートルを詰めていくしかありません。
パリ五輪では前半が2分1秒13。それを春の日本選手権で1分58秒97まで上げました。東洋大の後輩となる前から個人的にレースを見てきましたが「前半から行く」と言いながら、できない時が結構あった。パリ五輪ではメダルを取るために前半を抑え、折り紙付きの自由形でまくる作戦がハマりましたが、それで金メダルは取れない。マルシャンと差を感じ、本人の意思で新たなレース展開を実行したのが大きかったです。
マルシャンはパリ五輪ほど仕上がってなさそうで、調子は読めません。そうなると、まずは自分の泳ぎに徹することが重要。その上で28年ロサンゼルス五輪を考えると、世界大会での真剣勝負は今回、27年世界選手権の2回しかありません。私の現役時代も「平泳ぎのここのタイムは瀬戸大也選手と変わらないけど、ひとかきひとけりで離れる」など感じるものがありました。例えば「ここが0・2秒の差」と言われて、過去の対決の肌感覚と擦り合わせられる経験が重要です。
相手は4泳法の最初のバタフライ単体で、200メートルの五輪金メダル。時間をかけて各種目のレベルアップは必要ですが、それは伸びしろです。今回で日本記録を超えてほしいし、今年の時点で我々の想像を超える泳ぎを見せてほしいです。
○…スプリンターによる50メートル決戦にも注目だ。28年ロサンゼルス五輪で従来の自由形に加え、バタフライ、背泳ぎ、平泳ぎを実施種目として採用。萩野氏は「世界中に50メートルのスペシャリストがいる。日本勢では池江璃花子選手が、一番うれしいと思います」と分析した。
50メートルバタフライは混戦のメダル争いが予想され「0秒2~3ぐらいの差で2~6位がくることもある」と予想する。池江は自身の日本記録25秒11に、白血病からの復帰後ベスト25秒33と迫る。23年世界選手権のメダルラインは25秒46。萩野氏は「スタートで離されなければチャンスがある。12・5~13メートルで浮き上がって、35~40メートルあたりへの泳速が上がる。最後のタッチをまとめられるかも、メダルを取れるかどうかの鍵になる」とみる。50メートル種目の見どころは「力んだら終わり、というような繊細な世界。世界タイトルを懸けた緊張感での泳ぎが、難しさであり特徴です」と説いた。
◆萩野公介(はぎの・こうすけ)1994年(平6)8月15日、栃木県生まれ。作新学院高-東洋大-ブリヂストン。かつて北島康介氏を指導し、現在は松下を担当する平井伯昌コーチに師事。五輪は12年ロンドン銅、16年リオで金銀銅メダル。世界選手権は13年に銀2個、17年に銀1個。個人メドレーは200メートル(1分55秒07)と400メートル(4分6秒05)で日本記録保持者。21年東京五輪後に現役引退し、22年4月に日体大大学院に進学。177センチ。