フィギュアスケート女子の坂本花織(26=シスメックス)が13日、地元の神戸市内で行った現役引退会見の中で、結婚していたことを電撃発表した。今月5日にに入籍していたという。お相手はスケート関係者ではない一般人とし「楽しむことを忘れず、一緒に面白いことをしてくれる人です」と笑顔で明かした。
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坂本はいつだって変わらない。3月末にチェコで開かれた世界選手権。日本人最多4度目の優勝を果たした翌朝だった。約15分の一夜明け取材を終えると、報道陣に「時間ありますか?」と切り出した。マリメッコの赤色のかばんから取り出したのは、大量のスナック菓子のスコーン。「どうぞ、どうぞ」と記者やカメラマンに配り始めた。
今冬のミラノ・コルティナ五輪の際、菓子メーカー「湖池屋」から段ボール4箱分を贈られたという。それをお裾分けするために、スーツケースを1個増やして持ってきたのだった。自身の現役最終戦を前にしても、人のためを思って準備したのだろう。「昨日、人生で初めてこのスコーン食べたんですよ」。有終の美を飾った日の祝勝会が、スコーンというのも坂本らしい。10人以上に手渡すと、輪の中心で声を響かせた。「あー、スーツケース、軽なるっ!」。思わずみんなで笑い合った。
坂本はかつて、こう言っていた。「その人の立場になって『自分はどうやって動いたらいいか』を考える癖があって。スケートの成績だけで付き合いたくない。言いにくいことでも『かおちゃん、それ違うや~ん』『何やってんね~ん』と私には言いやすいみたい。それをなくしたくない気持ちもある」。思いやりに満ちた言動は、想像力ゆえだった。
この日も同じだった。会見前に報道陣に配られたメッセージカード。自筆で「メディアを通して私の言葉や演技、さまざまな思いを多くの方へ届けてくださったことに心から感謝しています」などと丁寧な字でつづった。「取材で私の雑談にもたくさん付き合ってくださって『もう終わり』と言われながらも、べらべらしゃべったのがすごく楽しかった。感謝の気持ちを込めました」。会見後には外で待っていた記者のもとへ歩み寄り「また雑談待ちでしょ」と明るく声をかけた。別れ際には一人一人と握手。「ありがとうございます!」と手を振った。スコーンも、カードも、屈託のない笑顔も。坂本の変わらぬ人柄が詰まっている。【藤塚大輔】