【アメフト】レイダースで日本人初のNFL目指すキッカー松澤寛政「毎日が発見」連日12時間

アメリカンフットボール ラスベガス・レイダースとドラフト外の新人契約を結び、日本人初の米NFL入りを目指すキッカー松澤寛政(C)Matt Aguirre/Las Vegas Raiders(2026年4日30日)

アメリカンフットボールの最高峰、米プロNFLのラスベガス・レイダースとドラフト外の新人契約を4月に結んだキッカー松澤寛政(27)が、本場で夢を追う日々を語った。4日(日本時間5日)にオンラインで、日本メディアの合同取材に対応。日本人未到の舞台へ「結果として日本人初めての選手になれたら、すごくうれしいことだなとは思っていますけど、一番は結果を残して、自分のキック、プロセスに集中すること大事」と強調した。

4月下旬のドラフト会議では、全257人の中で名前を呼ばれることはなかったが、事前に接触もあったレイダースから、正式な電話連絡が入って歓喜した。ドラフト外のフリーエージェント(UDFA)として異例の3年契約で合意。改めて、その時の気持ちを問われると「まず、このような場を設けていただいた方々と日本のファンの皆さまにお礼を述べさせていただきたい。心強かったです」と律儀にあいさつ。「まだ始まったばかりですし、これからたくさん大変なこともあるかと思いますが、成長できるように精進していきたい」と抱負を語った。

当日は国際練習生としてドラフト会場に招かれた。「キッカーがなかなか指名されなかったり」という狭き門(全体で1人だけ)だった中、会が幕を閉じてしまった後の正式な電話は「素直にうれしかった」と振り返る。

既に始まっているレイダースの練習については「施設も素晴らしいし、食事も環境も、大学とは違った環境。周りもスーパースターばかり。毎日が発見で、楽しいことばかりだなと思います」と明かした。

20歳になるまでアメフト未経験。動画を手本に独学で練習し、夢に迫る。現在は「朝の5時半から練習施設に向かい、約2時間の練習やミーティング、トリートメントなどを、だいたい夕方の5時くらいまで」と1日の流れを紹介した。

「僕は蹴っているだけですけど」と笑わせながら「ルーキー全体で、常にファシリティー(施設)にいてNFLについても学んでいる。全てが、ここで完結するのでありがたい」と毎日12時間ほど、心を躍らせながら憧れの“職場”に入り浸っている。

練習では、プロボウラー(NFLオールスター選出)キッカーのマット・ゲイらベテランから教わりながら、競争もしていく。「縮こまっていたのか『スイングを力強く』と言っていただいたり」とアドバイスも受けながら、定位置との距離感を測る日々だ。

その経歴は異色。千葉・幕張総合高までサッカー部で、主将のFWとして夏と冬に県8強。大学でも続けるはずが、受験に2年連続で失敗した。「どん底」。人生探しの短期旅行で渡米した19歳の秋、アメフトと出合う。運命か、当時オークランドが本拠だったレイダースの開幕戦を観戦していた。

「右も左も分からず初めて見ましたが、熱狂的なファンも多いですし、スタジアムの雰囲気だったり外的なすごさに圧倒されて」突拍子もなく「NFLに入る」と宣言。「初めて試合を見たチームに今、在籍できている。本当に縁のあること。できる、できない、ではなく、自分を信じてやるだけ」と笑顔を見せた。

その8年前は、帰国するや楕円(だえん)球を買って、アルバイトしながら公園で蹴り込んだ。敵陣ポール間にボールを沈め、フィールドゴール(3点)などを狙う専門職。有名選手の動画をYouTubeで見て、独学でフォームを体得した。2年後の21年夏、オハイオ州の短大へ。22歳で初めてアメフトの実戦に出た、超が付く遅咲きだ。

自身の動画を売り込んでハワイ大に編入。25年の開幕戦から25本連続でFGを決め、NCAA(全米大学体育協会)1部の最上位カテゴリー記録に43年ぶりに並んだ。自負する「正確性」と「Tokyo Toe(東京のつま先)」の異名を米本土まで響かせ、契約を勝ち取った。

「自分の強みはFGの正確性。続けていくことが大切。外しても、その後のキックが大事」

6月下旬までOTA(オフ期のチーム合同練習)があり、まずは己を強化することで、アピールに結びつけていく。ふるいにかけられるキャンプやプレシーズンの試合を経て、約90人から53人の開幕ロースター(登録枠)に生き残れば、米4大プロスポーツで唯一不在のままの日本人NFL選手が、初めて誕生する。

「「歴史あるクラブの一員になれて非常に光栄な気持ちですけど、基準の高さに驚かされています。自分も本当に高いレベルでやっていかないと、この世界では残っていけない。その中で指導、手助けをいただいて、この1カ月だけでも本当に伸びた実感がある。今は自分のことに集中して、最終的に53人の中に入れるよう頑張っていきたい」

開幕は9月13日のドルフィンズ戦に決まった。日本人が踏み入ったことのない領域へのサバイバル。夢を膨らませながら、険しい道を切り開いていく。【木下淳】