【カーリング】吉村紗也香“クールビューティー”の素顔…韓国で潤んだ瞳、カナダでの泣き笑い

ミラノ・コルティナ五輪の日本選手団壮行会で「弓ポーズ」を決めるカーリングの吉村紗也香(2026年1月)

カーリング女子日本代表としてミラノ・コルティナ五輪に出場したフォルティウスのスキップ吉村紗也香(34)が今季限りでの現役引退を決断した。24日、チーム公式サイトで発表した。

◇    ◇    ◇

“クールビューティー”の裏は、表情豊かだった。昨年3月、韓国で行われた世界選手権。好成績を残せば、五輪切符を手にできるチャンスだった。しかし序盤から負け越した。9戦目のトルコ戦後だったと記憶している。3勝6敗となり1次リーグ突破が現実的ではなくなった。おそらく今大会での五輪決定は消滅。とても悔しかったはずだ。

試合後の、取材エリア。リンク脇の狭いスペースに、吉村と記者5人が立った。空気は、とても重かった。打ち破ったのは、吉村だった。「皆さん、そんなに落ち込まないでください!」。ハッとさせられた。一番つらいはずの選手が、一番気丈に振る舞った。無理につくった笑顔の目は、うっすら潤んでいるようにも見えた。それでも、決して涙はこぼさなかった。

9月の代表決定戦を制し、12月にカナダで五輪最終予選に臨んだ。開幕前日、練習後に“母の顔”を見せた。1歳の息子を夫の実家に託し、遠征に来ており「息子の写真をいっぱい入れたアクリルケースを持ってきました。お守り代わりみたいな感じで」と告白。「ママ行ってくるねって言ったら『はい、いってらっしゃい!』って。ドライな感じでした」と苦笑いしつつ、うれしそうだった。

翌日からは“ゾーン”に入った。開幕から6連勝を達成。カメラのファインダー越しに見た吉村の顔は、3月に韓国で見たものと別人だった。ずっと険しい顔をしていたのが一転、どこか余裕すら感じた。結果はプレーオフを勝ち抜いて、五輪行きを決めた。息子の2歳の誕生日の3日前だった。「いい報告ができる。帰ったら息子に会えるので『ママ、頑張ったよ』って言いたい」と泣き笑いした。悔しさをこらえ続け、喜びであふれた涙は、とても美しかった。【飯岡大暉】