柔道男子66キロ級で21年東京、24年パリ大会2連覇の阿部一二三(29)と、女子52キロ級で東京大会金メダルの詩(26=ともにパーク24)が今夏「米国3カ年キャンプ」の2年目に臨んだ。2028年ロサンゼルス五輪を見据え、同じ地、同じ夏に、米カリフォルニア合宿を3年連続で行う計画。7月上旬に10泊12日の合宿を敢行し、柔道トレーニングも行った。兄妹V再現への歩みに、日刊スポーツが独占密着したリポートをお届けする。【取材・構成=飯岡大暉】
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また、ロサンゼルスにやってきた。一二三も詩も、昨夏と違う感覚だった。兄妹で2年連続の米国合宿。時差も気候もすでに知っていた。7月8日、練習場の大学施設で、口を開いた。妹は「去年よりなじみ方が早い。体が分かっている感覚がある」。兄は「頭で分かるのと、何回も経験するのは違う」。2年後の五輪へ、着実に歩みを進めた。
準備は第2段階に入った。昨年の初合宿は8泊10日。体を慣らすことに重点を置いた。今回は10泊12日。8日目に時差ボケが解消した昨夏の実績から、2日延長した。今夏のコンディションは万全。詩は6月19日にグランドスラム・ウランバートル大会、一二三は26日にグランプリ青島大会に臨み、ともに優勝。兄は試合から1週間たたず、7月1日に米国に乗り込んだ。
第1弾とは、環境も変わった。2人は白い道着で、黄色の畳に立った。前回は練習場が見つからず断念した柔道トレーニングを実施。付き人と組み合い、感覚を確かめた。普段の練習は別で、交わることのない兄妹。米国合宿ならではの風景もあった。一二三が詩に近寄り、助言。王者から王者へ、戦い方を授けた。兄は「あまり一緒にやることはないので、こういうタイミングで気になる部分があればアドバイスするくらい。言わなくても分かっていると思うので」。多くは語らずとも、思いを伝えた。
2人は進化も見せた。今年も坂道でラントレを実施。全長210メートル、高低差30メートルの丘。全力で駆け上がり、数分間の休息をはさんで、また次へ。気温28度、湿度54%。日本より走りやすい環境ながら、肌に汗がにじんだ。一二三は前年と同じ10本を走破。走行時間は合計60分から45分に短くなった。「全体的にペースを上げて、タイムも15分縮んだ。去年よりきつかった」とさわやかに振り返った。
詩は前回5本でギブアップ。頂上であおむけに倒れ込んだ。今回は目標を超える6本。苦しい表情を見せながらも、自分の足で坂を下りた。「去年はリタイアしたので、今年はもう1本やっておこうと。(柔道でも)最後まで諦めず取り組んだ人が勝つ。自分に勝たないと始まらない」と己に打ち勝った。
そんな姿を見て、兄も刺激を受けた。「気持ちが強い。兄なので、妹に負けたくない思いはずっとある。切磋琢磨(せっさたくま)していきたい」。オンもオフも、一緒。一軒家を貸し切り、生活もともにして妹も刺激を受けた。「練習する姿を見るのは新鮮。年に1回一緒に生活して、トレーニングするのがロスっていいのは良い」と笑った。
3度目の五輪へ、折り返し地点を迎えた。今合宿では、試合前日の計量後に摂取する「回復食」の新メニューのテストも実施。本番を見据え、万全の体制を整える。V3を狙う兄は「やっぱりロス五輪で2人で優勝が目標」。王座奪還を目指す妹も「4年前からこんなに五輪へ準備している選手はいない。2年後みんなでつかみ取る」と誓った。決戦は、28年7月16日。この地で、2人並んで金メダルを掲げる姿が、また一段とはっきり見えた。
◆阿部兄妹のロサンゼルス合宿 柔道になじみの薄い米国での五輪へ、昨年から実施。時差ぼけなどのデータを3年間かけて収集し、本番でのコンディション調整に生かす。一二三、詩ともに食品大手、味の素(東京都中央区)が取り組むコンディショニングサポート活動「ビクトリープロジェクト(VP)」による個別支援を21年から受けており、同社の提案で実現。管理栄養士と調理師が同行し、日本食の提供などサポートを受ける。今年は、第1弾から2日延長し、柔道トレーニングを取り入れた。