【卓球】張本智和にあふれる「野良犬」松島輝空への感謝「負けてほしい」と思った過去はもうない

松島輝空(左)と張本智和

<愛知・名古屋アジア大会:卓球:日本-中国>◇24日◇男子団体決勝◇スカイホール豊田

日本の男子団体が、8連覇中の中国に挑む。44年ぶりとなる決勝では、1966年以来、60年ぶり3度目の金メダルがかかる。

中心となるのは、世界ランク4位の張本智和(23=トヨタ自動車)。同3位の松島輝空(19=フリー)とともに、ダブルエースとしてフル回転の期待がかかる。

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張本はふっと笑みを浮かべながら、松島を足の速い「野良犬」に例えた。

「僕は足の速い犬に追いかけられて、ただただ走っている。速く走るメカニズムを研究するのも得意ですけど、野良犬を引き離そうと走るほうが、速く走れる時もあると思う。今、その野良犬に追い抜かされて、必死に追いつこうとしている感じです」

聞こえは悪いかもしれないが、「野良犬」という表現には、張本なりのリスペクトが込められている。

松島は左から繰り出す強打を武器に、急成長を遂げてきた。世界ランクも25年3月まで30番台に位置していたが、4月以降に20番台へ上げると、11月には1桁台へ。26年1月の全日本選手権で2連覇を飾ると、7月のUSスマッシュでは日本人で初めてグランドスマッシュ制覇を果たし、世界ランクは3位にまで上昇した。4歳年下の後輩はまさに「野良犬」のように突き進み、日本人トップへと上り詰めた。

張本にとっては、久々の陥落。はじめに心を占めたのは「悔しい」という感情だった。番付を上げ続ける松島に対して「負けてほしい」と思ったこともある。

ただ、一気に追い抜かれたことで、21年東京五輪後に水谷隼が引退してからは孤軍奮闘し続けてきたことにも気が付いた。

「東京オリンピックの時には、もう刺激となる存在がいなかった。そういう意味では、東京五輪の翌年くらいに彼(松島)がいてくれたら、もしかしたら僕はもっと早く強くなれたかもしれない」

そう思うと、胸の内を占めるのは悔しさだけではなくなった。

「悔しい気持ち、おめでとうの気持ち、感謝の気持ちの3つがある。それが今、卓球に向かう原動力となっている。彼の存在はすごく大きいなと思います」

その感情は、さらなる高みへの推進力になった。

8月のWTTチャンピオンズ横浜では、準決勝で松島を4-2で破って優勝。1週間後のヨーロッパ・スマッシュ準決勝で再び松島と激突すると、ゲームカウント2-3の第6Gを0-7の崖っぷちから奪取し、一気に逆転勝利を収めてみせた。9月のWTTチャンピオンズマカオでも、日本男子で唯一の4強に進出した。

1年前までは「負けてほしい」「負けてくれれば、自分が上に上がれる」と思っていたが、今は違う。

「今はそんなレベルの低い争いではなくて、とにかく2人がどれだけ勝ち上がれるかの争いだと思う。あっちが勝っても関係ない。自分が勝てばいい。足の引っ張り合いではなく、お互いがどれだけ勝てるか、です」

その先に、中国勢の撃破と団体での金メダルがあると信じる。

「松島を追いかけていれば、自ずと追いつけるだろうし、彼も僕を追いかけていれば中国の選手にだって勝てるだろうし。そういう選手が隣にいるのは、今となってはうれしいです。本当に健全な競争だなと思います」

心に火を付けてくれたことへの感謝を抱きながら、王国・中国に挑む。【藤塚大輔】

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