Jリーグの名門として知られる「東京ヴェルディ」。サッカーのイメージが強いが、実は2016年から「eスポーツ」に参入している。
愛知・名古屋アジア大会では、パズルゲーム「ぷよぷよ」で日本選手団最年少の栗原悠輝(11)が金メダルを獲得。大会史上最年少のメダリストとなり、所属先が「東京ヴェルディ」であることでも話題を集めた。
なぜサッカーのイメージが強いクラブが、デジタル空間へも領域を広げたのか。同クラブの担当者に尋ねた。
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東京ヴェルディの前身にあたる読売クラブは、1969年に誕生した。2019年に設立50周年の節目を迎える中、2016年に同クラブでは大きな方針を定めた。
クラブの担当者はこう振り返る。
「Jリーグのクラブはすべて『100年構想』という共通理念を掲げています。2016年頃に『折り返しの50周年が数年後にやってくるよね』という話になった中で、東京ヴェルディとして一つのメッセージを発信すべく、総合型クラブに歩みを進めていく方針となりました。サッカーの印象が強いと思いますが、現在は野球チーム、3×3バスケットボール、フットサルなど、計17競技を運営しています。そのうち、eスポーツはちょうど10年前の2016年頃から活動を始めました」
eスポーツチーム設立の背景には、時代の変化を見据えた戦略的な狙いがあった。
「若年層が情報を得る手段が、スマートフォンに移行していった時期でもありました。eスポーツは当時はまだ物珍しさもありましたが、若年層とのタッチポイントとして非常に期待ができるという狙いもありました」
新たな世代や新規のファンへアプローチするため、デジタルに最適化されたeスポーツへの参入を進めていった。
さらに当時はアメリカやアジア諸国でeスポーツの市場が拡大。欧州ではサッカー名門の「マンチェスター・ユナイテッドFC」や「バレンシアCF」がeスポーツに参入していた。
国内では発展途上の分野だったものの、海外の先行事例に触発された面もあり、日本のプロスポーツチームやJリーグクラブとしては初めて、eスポーツチームの設立へと舵を切った。
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東京ヴェルディは全国リーグ「日本eスポーツリーグ(JeSL)2017 Summer」での優勝を皮切りに実績を積み上げ、アジアリーグ「E-LEAGUE 2021」や東京五輪の公式eスポーツイベント「Intel World Open ロケットリーグ大会」で日本代表にも選ばれた。
2022年には「eFootball Championship Open 2022 World Finals」を制し、世界の頂点にも立った。
現在はサッカーゲームをはじめ、複数のゲームタイトル部門で10名前後の選手が所属している。
快進撃を続ける中、東京ヴェルディのeスポーツにおける挑戦はプロチームの運営や競技力の追求だけにとどまらない。近年は子どもたちを対象としたワークショップを不定期で継続的に開いている。
栗原との初めての出会いも、彼が小学校低学年だった頃に東京ヴェルディのイベントに参加したことだったという。
「eスポーツをサポートしている人の存在を知ってもらいたいという思いがありました。そこから人材育成につながっていけばいいなと思います」
より多くの人がeスポーツに触れられる機会を創出することも、チームの重要な使命と捉えている。
ワークショップでは、カメラワークの切り替えや実況・解説などの裏方仕事が体験できる企画を実施。地方行政との連携やキッザニアとのコラボレーションなどを図りながら、次世代の人材育成やキャリア教育に力を注いでいる。
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今年は参入から10年の節目となり、社会的な影響力は確実に増している。
アジア大会では日本代表の栗原が、ぷよぷよ部門で金メダルを獲得し大きな反響を呼んだ。
大会の会場には、小学生の児童が応援に訪れていた。「年齢は2歳しか変わらないのに、金メダルってすごいね」「日本代表を応援しようね」。家族とそんな言葉を交わす姿もあった。
「栗原選手の活躍などを通じて、eスポーツやチームを知っていただけたらうれしいです。今回の金メダルを会場で見た子どもたちが、情熱を持つことができたり、ワクワクしながら時間を過ごせたりすることにつながればいいなと思います」
伝統あるサッカークラブがデジタルという新たなフロンティアに挑み、eスポーツは国際大会で注目を浴びる競技へと発展した。
これからもeスポーツの可能性を信じ、未来を切り開いていく。【藤塚大輔】