バレーボール女子の日本代表で栗原恵との「メグカナ」コンビで活躍した大山加奈さん(42)が、Vリーグ女子アルテミス北海道のチームディレクターに就任した。
プレー面の技術的なコーチングよりは、選手のメンタルなど競技以外でのサポート、また社会貢献などクラブ運営に携わる。若くして世界で活躍した大山さんが、若いチームに伝えたいことは-。【取材・構成=本間翼】
アルテミス北海道の山崎オーナーと通っていた歯医者がたまたま一緒だったという不思議な縁からオファーを受け、大山さんは北の大地であらたな挑戦に踏み出した。
「アルテミスが目指しているチーム像だったり、やろうとしてることにすごく共感を覚えたのが大きかったです。自分の中でも新たな環境でまた頑張りたいっていうところがあって、そういうタイミングでこういうお話をもらえることは何かあるんだなっていう、結構“ビビッと”きました」
現役引退後はバレーボール教室などで競技普及に尽力するとともに、女性アスリートのメンタルヘルス、キャリア構築支援でも活躍してきた。「女性活躍のシンボル」となることをテーマに掲げるアルテミス北海道とは、考え方の共通点も多かった。
「私の経歴だけを見ると、皆さんにはすごく華やかに見えると思うんですけど、その一方で、けがで苦しんだりとか、メンタルヘルスの不調で苦しんだりとかっていう挫折も味わってます。その栄光も挫折も経験してきたことが1つ大きな財産だなって思います。それと引退後に不妊治療をして子供を授かって、いまは子育てと仕事の両立をなんとかしようとしている。そういういろんな経験があるので、競技者としてはもちろん、いろんな方に向けてアプローチができるんじゃないかなと思ってます」
チームは2季連続最下位。経験の浅い若手が多く、選手たちとは今後オンラインを含めて面談を実施していく予定。根底にあるのは、きらびやかに見えた10代、20代のころの自身の後悔だ。
「勝つことにしか意味がない、価値がないって思い込んでしまっていた。結果を残すことで自分の存在価値が出てくると。なので、やっぱり苦しくなってしまったところがありました。もっとその過程だったりとか成長っていうところにフォーカスして競技と向き合ってきていたら全然違ったなって思います。日本代表になってオリンピックに出るという目標はあった。でも目標はあってもなんのためにバレーボールをやっているのかという目的がなくて。この目的だったり、自分がどうありたいかみたいなことがちゃんとあれば、全く違う競技人生になってたと思っています。むしろそっちの方が大事。そういったところも伝えていきたいですね。アスリートって弱音を吐く場所がなかなかない。弱さ見せてはいけないと思ってしまうところあると思うんです。そんな選手たちの弱音を吐いていい場所でありたいなっていうのがあるので、そういったサポートもしていきたいなと思ってます」
監督、コーチを尊重しつつ、もちろん元一流プレーヤーとして「選手から求められるのであれば、多少のアドバイスはしていきたい」と、プレー面での助言も惜しまない。後藤優介監督(42)も「大山さんの経験は私たちに必要なもの」と期待する。
今回の契約は1年間。
「1年で何かを成し遂げるのは難しいと思ってるんですけど、選手ひとりひとりが、いろんな悩みとかを抱えずに、安心してバレーボールができる、仕事に取り組める環境を一緒に作っていきたいなって思ってます」。
◆大山加奈(おおやま・かな)1984年(昭59)6月19日、東京都生まれ。女子バレーボール元日本代表。小学2年からバレーボールを始め、成徳学園では主将としてインターハイ、国体、春高バレーの高校3冠を達成。卒業後は東レ・アローズに加入。力強いスパイクを武器に活躍した。日本代表には高校在学中の01年に初選出、五輪、世界選手権、W杯の3大大会すべてに出場した。引退後はバレーボール教室や講演活動などを行う。