【トライアスロン】林彩夢が初Vで大会史上初の姉妹女王に「優勝してほしいと」姉との約束果たす

日本選手権初優勝し、カップを掲げる佐藤錬(左)と林彩夢

<第32回日本トライアスロン選手権>◇1日◇東京・台場周辺特設コース◇スイム1.5キロ、バイク40キロ、ラン10キロ

日本トライアスロンに新たな女王が誕生した。

昨年7位の林彩夢(あやめ、20=日本福祉大・まるいち)が1時間55分44秒で初優勝。愛知・名古屋アジア大会個人銅メダルでこの大会過去2度優勝の姉愛望(まなみ、21=日本福祉大・NTT東日本・NTT西日本)に続いて、初の姉妹日本一に輝いた。

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接戦を制した林は、両手を高々と上げながらゴールテープを切った。「昨年の大会は7位に終わって悔しかった。ここで優勝するために1年間練習してきたので、本当にうれしい」。笑顔を弾けさせながらも、テレビのインタビューでは声を詰まらせた。

プラン通りのレースだった。得意なのは最後のラン。大学では陸上部に所属してトラックレースや駅伝にも出場する。「1500メートルが得意で、ラストのスピードには自信があった」。武器を生かしたレースだった。

「スイムを先頭集団で上がれて、いいレースができた」と振り返った。バイクでも先頭を守り、ランでは愛知・名古屋アジア大会代表の平泉真心にピタリとつけた。「平泉さんが強いのは分かっていたけれど、最後のスピード勝負なら勝てる」と相手の揺さぶりにも耐えた。

ランの最終周回、折り返しで平泉がバランスを崩すと一気にスパート。ぐんぐん引き離して、最後は30秒の差をつけた。「これまでは得意とするランが生かせなかったけれど、スイムとバイクを強化してランで強みが出せるようになった」と、胸を張って話した。

姉の愛望は17歳でこの大会を制し、昨年2度目の優勝を果たした日本女子の新エース。今大会を欠場した姉からは「優勝してほしいと言われていました」。姉との約束を果たして大会史上初の姉妹女王となり、海外転戦中の姉には「勝ったよと報告します」と笑顔をみせた。

走り始めたのは4歳の時。「姉が小学校1年の時にマラソン大会のために毎朝走っていたので、一緒に走ったのがきっかけ」。小6でキッズトライアスロンに出場し、高校生から本格的に競技を始めた。「メインはトライアスロンですが、陸上競技の経験も生きている」と話した。

国内最大のタイトルを手にして、夢は広がる。「この優勝をスタートに、世界で戦えるように力をつけたい」と意欲をみせた。目標は姉と同じ日本代表、そして五輪出場。「2032年の(ブリスベン)オリンピックに向けて練習を積んで、姉と勝負したい」と話した。

1週間前の10月25日に20歳になったばかり。表彰式恒例のシャンパンファイトは10代選手は参加できないが、ギリギリで美酒を浴びることができた。「うれしかったです」と言いながらも「飲んではいないです」。初々しい新女王が、姉とともに世界へ飛び出す。

〇…愛知・名古屋アジア大会金メダルの北條巧(30=NTT東日本・NTT西日本)が、足の故障をおして表彰台に立った。4度目の優勝を狙った北條が、トップでスタートしたランで失速。それでもエースの意地をみせて3位でゴールし、沿道のファンの声援に応えた。

真っ赤な髪の毛が、すっかり定着した。沿道のファンからの声も届いた。「一瞬やめようかと思ったけれど、最低限の走りはしようと切り替えた」。一時は大学生たちにも抜かれて5位まで後退したが「何とか粘って表彰台に立てて良かった。3位と4位は全然違うので」と胸を張った。

9月のアジア大会では個人で金メダルを獲得した。チームジャパンに勢いをもたらす日本勢大会第1号金メダリストとして注目された。トライアスロンを知らない人たちにも顔と名前が知られる大きなきっかけになった。「いろいろと声をかけられることもあるし、今日の声援も過去一番大きかったように思う」と笑顔をみせた。

今大会でも、一番の注目選手だった。アジア大会などでオーバーワークがたたったのか左ひざを故障。万全な状態ではない中で強行出場した。「この足の状態ではラン勝負はできないと思った」と、バイクでは何度も仕掛けてライバルたちの足を削るなど、勝つために最善を尽くした。

結果的には佐藤錬、定塚利心に先を行かれて3位に終わったが「どんな状態でも、それに合わせたレースをしなければいけない。足がもたずに3位だったけれど、今できる最高のパフォーマンスはできた」と振り返った。

目標は2年後、あと一歩で逃してきた五輪出場の夢をロサンゼルス大会で叶えることだ。そのためには世界ランクに直結するレースでポイントを稼ぐこと。今季も、まだ3レースを残している。「できることをやっていくこと。それが(五輪出場に)つながるのかなと思う」。赤毛のエースは、ロスを見据えて言い切った。

▽男子成績<1>佐藤錬(三井住友海上)1時間41分23秒<2>定塚利心(流経大・NTT東日本・NTT西日本)1時間42分27秒<3>北條巧(NTT東日本・NTT西日本)1時間42分44秒

▽女子成績<1>林彩夢(日本福祉大・まるいち)1時間55分44秒<2>平泉真心(トランスコスモス)1時間56分13秒<3>杉原有紀(滋賀県スポーツ協会)1時間57分4秒